再度 マイカルとダイエー
昨日マイカルの八割引セールがテレビのニュースで話題になったが、
なんら驚くことはない。
全店の残りかすのような在庫を片付けようとしただけで、
金額にして百億円あったということは、
全品売り切れば八十億円損をするということである。
売れ残りが出れば廃棄処分だからもっと損が出る。

スーパーがいかに利益を出せるかということは、
衣料品の販売力にかかっているといって過言でない。
衣料品が最も粗利益率が高いからだ。

大手スーパーの中で衣料品が得意分野だったのは、
イトーヨーカ堂とニチイだった。
ダイエーは画一的な戦略をとるものだから、
食品と日用品はずば抜けて強かったが、
衣料品がずいぶんと苦手だった。
だから売上は業界ナンバーワンでも、
経常利益でははるかにヨーカ堂に及ばなかった。

マイカルは、社名がニチイの頃は
いい衣料品を安く販売して、衣食住の三部門がバランスよく展開できて、
めきめきと頭角をあらわしていた。
しかし、その後サティとビブレなどという百貨店志向を強めたため、
バブル崩壊後の消費者のニーズに対応しきれなくなっていった。
挙句に、集客のためと娯楽施設に膨大なお金を投入したりして、
見返りのないビジネスに明け暮れてしまった。
気がついたときは後の祭りである。
不良債権を膨大に抱えるゼネコンとまったく似たようなものだ。

目立たぬようでバランスがよくとれていたのがジャスコだった。
ヨーカ堂ほどではなかったが、
合併しながら大きくなっていたため、
創業者の影響度が少なく、
身の程をわきまえたビジネスに勤しんでいた。
都会ではそんなに強力ではなかったが、
ローカル都市では持ち前の柔軟さで、
お客様の声を大切に品揃えをするということに重点をおいていた。

マイカルの八割引セールでは、
夏物も多く見受けられた。
どう見ても2〜3000円にしか見えないメンズシャツに
9800円の値札がついていて、
その下に1000円の赤い割引シールついていた。
そして、そこから八割引すると、200円の売価となった。

9800円という初めの価格がインチキなのである。
割引用に作られた商品は、前以って二重価格になっていて、
安さを煽って衝動買いを誘うのである。

だが、バブル崩壊以降、消費者も賢くなって、
そんなインチキにだまされなくなってきた。
いいものとそうでないもの、
安いものと高いもの、
品質と価格のバランスを欠いた商品には
消費者の不信を買うだけになっていった。
 
そして、定番商品の粗利益は、50パーセントを優に超えていたことだろう。
少なくとも原価の二倍では売っていた。
そうしないと季節中頃からのバーゲンができなかったからである。
最終利益は30パーセントを目指してはいたが、
その目標数値も在庫一掃もできなくなってきた。
客離れが起きてきたのである。

その状況の最も顕著な企業はダイエーだが、
取引先のグループでは、返品のダイエーとまで異名をとっていた。
ダイエーからの返品でどれだけの問屋が潰されたことだろう。
だから、よけいダイエーにはいい商品が少なくなっていった。

ヨーカ堂は理由のない返品をしない。
綿密なバイイングと品揃えによって、
一品たりとも残さずに売り切ってしまう。
たとえその商品で損が出たとしても、
売り切ってしまえば次にはまた新たな商品を揃えることが楽にできる。
その姿勢が取引先の信頼を得、
ヨーカ堂には滅多なものは提供できないという土壌ができていたのである。

ヨーカ堂も最近はユニクロなどの専門店に押されて、
いささかジリ貧気味だが、
ユニクロブームなど一過性のものだと思う。
百貨店、総合スーパーの中では、
衣料品を制するところが利益をあげている。
だから、衣食住、この三分野では衣料品を扱うことが最も難しく、
最もやりがいがあるのである。
たぶん、ヨーカ堂は転んでも起きないだろう。
ユニクロに負けてばかりではいないはずである。

福岡ダイエーホークスの身売りが取り沙汰されている。
1993年に福岡ドームができ、
1999年には念願の優勝を果たし、
2000年には連覇を達成した。
昨年は惜しくも二位に甘んじたが、
観客動員は新記録となり、
ようやく営業利益も黒字となってきた。
福岡の市民球団として愛されてもいる。

しかし、大手四行から球団売却の指摘が出ているのも事実である。
ダイエーが福岡にドームを作ったのには、
市とダイエーとの密約があった。
それはバブル期に博多湾埋立地ができたとき、
当時では破格の価格でダイエーが購入していたからである。
現在においては、恐ろしく高い買い物になってしまったのだが・・・・・・・。

ダイエーはその埋立地に市との約束どおりツインドームを作り、
球団のフランチャイズを福岡市に移し、
さらにシーホークホテル&リゾートを建設した。
ダイエーの思惑はさらにそこに隣接して、
ファンタジードームと一大娯楽商業施設を構築することだった。
しかし、その目論見はバブル崩壊が継続することによって、
頓挫を余儀なくされる。

ダイエーが、福岡に投じた金額は
大手四行によると1700億円とも報じられているが、
地元の金融機関からの借入や子会社の投じさせられた額を合算すると、
ダイエーがかかえる2兆3000億円という有利子負債の
20パーセントにも喃々すると伝えられている。

創業者の道楽がもたらした悲劇だ。
すべてを売却するとしても、
300億円が関の山だろう。
そんな切羽詰った状況でもオーナー一族は身の保全を考えている。

東京証券取引所では、
大手四行の債権放棄が伝えられた日、
ダイエーの株はストップ高したが、
翌々日の今日、ふたたび100円を割り込んだ。
投資家はダイエーを信用していない。
小銭を稼ぎたいわずかな投資家が右往左往しているだけである。

本日再び、ダイエーの格付けが引き下げられた。
どん底まで残りわずかとなっている。