マイカルとダイエー
マイカルとダイエーは昨年当初より経営不安がささやかれていた。
バブル期以降の両社のずさんな経営体質は似たようなものであり、
利益に見合わぬ拡大路線を突っ走っていた。
本業以外のことに手を出して失敗を繰り返しても
創業者(オーナー)に取巻き(役員)は意見具申することなど皆無だった。
御機嫌ばかり窺っていた。
ダイエーには大久保彦左衛門的存在がいたことはいたが、
後を継ぐわが子かわいさに左遷されてしまった。

両社の有利子負債の額は売上総額に匹敵するものであり、
少々の利益が上がっても金利の支払いに消えるのがおちだった。
近年の低金利がどうにかこうにか借入金の膨大な企業を支えていた。

けれども本業が赤字に転落し、
借入金を増やさないと支払いができない状態になると、
銀行も黙っていられなくなった。
いくら返済○○年計画を打ち出したところで
売上が前年比を下回りつづけてきたら
どこもその計画をあてにはできないと確信した。

瞬間的に売上が純利益にとって変わらぬ限り、
借入金は永遠に返済不可能に陥ってしまった。
それはとりもなおさず自力での経営再建は不可能ということである。

両社共に優良子会社の売却を進め、
負債額からいうと一割程度を返済したが、
それは自分の手足をもぎとって身動きできないダルマさんになっただけだった。
優良子会社は親会社と相互扶助の関係にあったからだ。

今日のニュースでは大手四行が、
ダイエーの債権放棄をしたとかしないとか。
東京証券取引所ではそのニュースにより、
ダイエーの株式はストップ高となり、
大手銀行の株式は下落した。

ニュースのほどは確たるものではないので、
まだまだ紆余曲折があるだろうが、
三井住友銀行のコメントでは
現経営陣の取り組みは評価できるということだった。

しかし、国民の税金でもって資本注入された銀行が、
それだけのことで二兆円を超える負債をご破算にして許されることだろうか。

マイカルは民事再生法から会社更生法に切り替えられた。
ジャスコを核とするイオングループが、
倒産させて新たな一歩を踏み出すということでなければ、
再建には協力できないと主張したからである。

トップ企業のイトーヨーカ堂グループ等は、
欲しい店舗の切り売りだけを望んでいた。

マイカルとダイエーに大きな差はなかった。
違いは四番手だったマイカルが追いつけ追い越せで無理をしすぎていたという点、
ダイエーに比べて人材が不足していた点である。

マイカルが民事再生法を申請したとき、
社長は小売業にはずぶの素人の元警視庁のOBだった。
マイカルの子会社の警備会社からの転身であった。
そこには大手メインバンクの思惑が働いていた。
むろんそれは先行きを見越した人事だった。
社長は銀行の傀儡の如く動き、
後に取締役たちが反乱を起こして、
彼を解任に追い込んだが、ときすでに遅しだった。

果たしてダイエーの再建は果たせるであろうか?
オーナー一族の退陣により、
創業時からのつわものが帰ってきたが、
彼らとてはや還暦を迎えた。

このままだとかつて三越の売上を抜いて小売業トップの座に躍り出た
主婦の店ダイエーの名前が早晩消えていく。

ダイエーの商品は駄目だ,と風評が立ちかけてからどれほどたつのだろう。
いつかしらメーカーや問屋では、
いい商品を納品する企業の順序ができあがっていた。
ダイエーにとってその序列は売上はトップでありながらも
ずいぶんと後塵を拝していた。
その理由は簡潔明瞭である。
納品された商品を売り切ることに精力を注がず、
残った物は問答無用で返品していたからである。
そんな会社にいい商品は納めたくなくなるのは当たり前のことである。
いい商品がなければ、いくら掛け声をかけてもお客さんは見向きもしない。
商品部のお歴々には物の道理がわかっていなかったのである。

私はがんばれダイエーとは言わない。
今後を見ているだけである。
ただ、マイカルもそごうも長崎屋もヤオハンも、
すべては経営陣の愚劣さと無能さと身勝手さと傲慢さから倒産した。
先見の明までは望むべくもない。
身の程を心得て本業に勤しんでさえいたなら、
倒産するまでは至らなかったはずなのである。
規模や知名度など気にせず、
ヨーカ堂の歩みのようなものを手本にしていたならと思うのである。

たくさんの従業員が泣いている。
その家族が泣いている。
小規模だったテナントが泣いている。
そして、多くの取引先が泣いている。
それは少なくとも数十人の死につながってもいる。

債務を免除して一企業を救う、
その意図するものがわからない。
昨年十月、青木建設は一旦債務免除をとりつけておきながら、
銀行の支援が受けられなくなったと十二月に倒産した。
マイカルもそんな時期があった。

今日のダイエーのニュースは、
束の間の喜びかもしれない。
いつもの手で銀行がインチキしようとしているなら、
やっぱり私はこう言おう。

がんばれダイエー
社員のみんなへこたれるな!
自分たちの店は自分たちで守れ!
家族を守るために立ち上がれ!

社是 店はお客様のためにある