「語り継がれる物語」
眠る幼子のそばに
兵士が立つ
「ここで、守っているから
ゆっくりおやすみ」
幼子が問う
「何がやってくるの」
兵士は答える
「おまえが怖がる必要はないのだよ。
わたしが守っているのだから」

幼子はやがておとなになり、
兵士は年老いた。
歩きつかれた兵士のそばに
青年が立つ。
「ゆっくり、休んでおくれ。
わたしが、見守っているから」
息を引き取る老兵士を弔い
青年は再び、歩みだす。

妻を娶り、子をなし
青年は眠る母子のそばに立つ。
「ゆっくりおやすみ。ここで、守っているから」
青年は兵士となり
守るべきものを得て、
はじめて老兵士が見ていたものを
見た。