星屑工房

その手捌きで

愛は

悦びになる
悲しみになる
苦しみになる

夢は

理想になる
現実になる
幻になる

わたしのコトバは

解体され
別なものに
生まれ変わる

あなたの手捌きが
わたしを満足させる

黄昏の時をたたむは
薄闇の陰に潜む偽りの
足早に駆け抜ける
想い煩う我の白絹

求めてはならぬ
恋うてはならぬ
とどめてならぬ
想いや何処

等身大の幸せと
等身大の不幸せ
平和ボケのまま
恨むことなく
悲しむことなく
笑ったままでこの世を去る
歴史の端布を
懐にして

十三夜の銀に彩る
川原の肖像
象られた思い出に
しんとする　風
水面のさざめき
逆らう月の光に
輝く穂先

汽笛が聞こえるのは
幻聴か

Be　ｑｕｉｅｔ！　Be　ｑｕｉｅｔ！
と激しく囀る小鳥に
笑いをこらえ
晴れた空をベッドの上から窓越しに
見上げる

「朝だよ」と
あなたの耳元に囁いてみるが
まだ夢心地
そっと　起きて
ひとりで朝のコーヒーを飲む
読みかけのページをめくる

いつもの朝に
違う次元が扉を開ける
いつもの休日

ガラス越しの日差しに
車のメンテナンスを待つ
わたしの皮膚は
夏を思い出している

しょうもない万国旗
有線放送のあいまいな音楽
つけっぱなしのテレビジョン
切り取られた日常は
現代アートの亜空間

まとわりつく幼子のように
コトバが意識に
じゃれついてくる
嗜めようと
手を伸ばすが
暴れて捕まえられずに
わたしはふざけて地団太を踏む

あなたのことばを
大切にいとおしむ
両の手に受け止めて
そっと　くちづける
そっと　飲み乾す
わたしの中にあなたが入る

わたしのコトバを
あなたに贈る
あなたのまわりで
いつまでも　羽ばたいていられるように

出口を探すには
風を見つけよう
風は出口から入ってくる
手招きをするように

ほのかな光を感じよう
体中の感覚を研ぎ澄ませて
光は出口から入ってくる
抱き寄せるように

橙色の風紋
緋色の簪


季節の終わりの
嵐の置き土産