2002年09月の記事


「あ・き・か・ぜ」
ないしょだよ
風が ひっそり秋を連れてきた

夕日の紅い色
虫の音
木の葉の裏側

ないしょだよ
って、みんなが笑ってる
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「新人類」
70年代の若者は今
育ち損ねた大人たち
犯罪に暴走するのは
コントロールしそこねた自我?
形成されなかったアイディンティティ?

議論する余地なく
壊されていくルール
壊していく価値観
縋りつくべき藁もない
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「月の光に」
この光を浴びたら
溶けてしまう
溶けて 流れて
蒸発して
光になって
あなたのところへ
届くように

夜露に濡れた膚は冷たく
月を見上げる人の
唇は温かく

光になったわたしは
あなたに同化する
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「十五夜」
薄絹の陰に隠れる
中秋の月

憂える少女の
瞳の翳り

幾年も見下ろす恋の
ゆくえ知れずや

ため息交じりの
蒼き光
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「日和見主義」
百姓はいつも日和見

秋晴れの日に
田植えする馬鹿はイネェ
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風は気まぐれ
気まぐれな風を
帆に受けて
大海へ船出するには
人手不足か

凪の日はオールを漕ぎ
嵐の日は帆を降ろす
そんな単純な事さえできぬゆえ

気まぐれな風のゆくえは
誰も知らない
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「悪評」
誰もが同じことを言うので
飽きる

誰もがうなずくことしかしないので
首ふり人形になってしまったのかと
思った

自分の方を見てくれる人が
味方だと思っている

誰も
自分と同じ方向を見る人のことを
気がついていないのかもしれない
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「夢」
意識の浅瀬を
誰かが通り過ぎる

空色の薄紙を幾重にも重ねて
家の柱を組み上げる鳶職人たち
一人の若者がいう
天丼を供えてくれ、と
皆の分でなくとも たったひとつでもいい、と
わたしの手作りでよいかと聞くと
笑って 横に首を振った

夢はいつでもヘンなものだが
会ったことのない死者との会話は
妙にリアル

さて おいしい天丼をさがしにいこうか
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「狩人」
収穫物は

野ネズミ  ヘビのこども
モンシロチョウ  セミ
カマキリ もぐら
ノバト すずめ

我が家の 野生の猫の狩猟
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「主婦と生活」
なべの蓋をあけたところで
神の声が聞こえるわけじゃない

掃除機をかけたところで
世の中が変わるわけじゃない

買い物をしたところで
誰かの命を救えるとは限らない

こんな生活
止めたところで
どうにかなるんだろうか
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「かばんをひとつ」
旅に出ようかと思った
どこか 知らない街へ
あなたがたどった道を
訪ねて歩こうかと思って
かばんをひとつ
買おうかと思ったのに
何を入れていったらいいのか
考えが及ばなかったので
買うのをあきらめて
旅に出るのもあきらめて
ひとり
あなたの書いたページを
開いてみた
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「初秋」
降る如く
アキアカネ
稲田の風は
山より吹く
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「旅情」
山を旅する
景色を塗り替える

海を旅する
想いを塗り替える

色を旅する
空を塗り替える

コトバを旅する
地図を塗り替えるために
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「ひとしずく」
てのひらにうけとめる
夜露のしずくを
月夜にかざす

映し身の光は
震えるしずくの
芯となる

朝日を待てば
悦びも重なる潮の
原始となる

草の端
昇るしずくは
民の意志
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「切望」
父はいらない
母もいらない
国もいらない

安らかに眠れる場所と
餓える事なきほどの食餌と
暖かき
あなたの愛があればいい

それを得るためだけに
わたしは
戦い続けなくてはいけないのか
戦わなくては
得られないものなのか

略奪は願望なのか
殺戮は必須事項なのか
平和は夢に過ぎないのか
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「影踏み」
あなたを追いかけて
影を踏む
逃げるあなたの影を踏む
踏んでも踏んでも
捕まえられず
なんだか 悲しくなる

影を踏まずに
あなたの後ろをついてゆく
離れすぎないように
見失わないように
あなたの後をついてゆく

お日様の向きが変わって
わたしの影が
あなたに踏まれる
わたしはあなたの虜囚になる
もう
動けない
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