2006年01月の記事


「睦月正月終わりの日」
めくる暦に
冬終い
めでたき正月
睦月もお終い
早雲雀の高鳴き
如月
春もそこそこ
遠からじ
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「展望」
三十二階を選択して
エレベーターを降りる
三六〇度 視界はひらけ
遠くの山々を見渡す
三々九度の誓いから
この地は子どもたちの
故郷になった
どんなに背伸びしても
わたしの故郷は見えない
三種三様
子どもたちは故郷を巣立つ
その地は
故郷の山々が見えるかい
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「悪徳」
赤を滲ませた黒は
だれにもわからない
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「風はまだつめたく」
建ち並ぶ電信柱を揺らして
風が渡る
楽しげにかきまぜて
街ゆく人々を走らせる
猫が陽だまりで丸くなる
麦畑を掃きだすように
風が通る
街が肩をすくめて
春を待つ
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「華」
凛として
立つ
翳を欲して
呑み込む
眼差しは
先を見届ける
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「陽射しこぼれる」
国道を走行する間
フロントガラスは
冬の風をシャットアウト
雲の隙間から射す陽は
すでに
春をこぼしている
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「枯れ枝」
かそけき木枯らし
つないで冬芽
明日の朝には春が来る
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「山白き」
山の頂きは白く
峰々に連なる
雲の輪郭は
美しく
緋色に縁取られ
迫る夕闇を
光背
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「降雪予報」
すべてを白塗りにする
それには足りない
降雪量
それでも
あわてふためく
メディア
日の光とともに
溶解する結晶に
なんの変哲も
見出せずに
流れていくさまを
追う
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「しだれ雲」
雲が下界を見ている
気になるように
触手を伸ばして
闇を掴む
誰かを探しているように
雲が降りてくる
見つからないように
そっと
鍵をかけ
カーテンを閉ざす
光を遮る雲のように
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「おなべや ぐつぐつ」
「おなべや ぐつぐつ」
おとぎ話の女の子
呪文を唱えて お粥を出す
「おなべや ぐつぐつ」
呪文を唱えてみても
でるわけないから
大根切って こんにゃく切って
ちくわを切って さつまあげ切って
はんぺん切って ゆでたまご入れて
「おでんや ぐつぐつ」
できました
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「雪が降る前の空気の冷たさ」
空に雲が張る
雪が降る前の静けさを
閉じ込めるように
明日という時間を
避けるように
帳を下ろすのは
冷たい空気が
まだ解決しない問いを
開放しないからなのだ
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「崩壊」
残骸が目の前にある
これが
立ちはだかっていたのは
つい昨日のこと
残骸を乗りこえて
見えるのは
絶望か 希望か
崩れていくものを
何者が止めることができたろう
絶望が縋りつき
希望が諦める
崩れていくものを
誰が再び
礎とするのだろう
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「北颪」
寒風に首すくめ
三方の山々を
眺めまわす
いつにもまして
白い山肌
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「荒れ野」
ぼうぼうと
枯れ草の渡る
虫たちの荒野
ぼうぼうと
風が渡る
開き直った顔の
荒れ野
ぼうぼうと
生い茂る
雑草という名の
生命
ぼうぼうと
立ち尽くす
ひとり
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「東から」
朝焼けの空に
雲ひとつ
「おーい 元気か
 お日さん 昇ってくるぞ」
今日もいちにち 始めるね

夕焼けの空に
星ひとつ
「おーい 元気にやれたか
 お月さん 昇ってくるぞ」
今日もいちにち ごくろうさん

お日様が隠れてる日があっても
お月様が見えない日があっても
一日は東の空から始まっている
きょうも変わらず
あしたも変わらず
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「宴」
ムクドリの騒がしげな群衆
電線に止まり
夕暮れどきの宴

一羽
独りを楽しむツグミは
楓の枝にとまり 囀る
ツッツ ピー
ツッツ ピー

ジュワジュグジュグジュグ
ジュワジュグジュグジュグ

ツッツ ピー
ツッツ ピー

猫が呆れ顔で見上げてた
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「ルーツ」
街中にぽっと生まれたわたしは
背中に背負うべき歴史を持たない
街中で育ったわたしは
伝えるべく伝統をもたない
父方の祖父も母方の祖父も
農夫をしていた
先祖代々の土地をわけてもらい
耕し、蒔き、育て、収穫した
土地が歴史を語り
村の鎮守が伝統を授けた
街で生まれ育ち
幾度かの引越しをしたわたしには
語るべき歴史も
伝えるべき伝統もない
体のあらゆる細胞に刻まれているはずの
情報だけがルーツを覚えている
語るべき歴史をもたないわたしは
何を語ろう
伝えるべき伝統をもたないわたしは
何を創ろう
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「路地」
駆けていく
学校帰りの小学生
近所のおばさんが
笑っている。
時間が止まったように
風が吹きだまる。
踏み切りの警報が
思い出したように
鳴り響く。
夕餉の時間が
帰ってくる。
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「アクションシーン」
テレビ画面に繰り広げられる
アクションシーン
勧善懲悪
悪いやつを叩きのめす
かっこいい女
悪女をひっぱたく
いかす男
痛みは極彩色に色分け
緊迫感は
日常を破壊
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「北風」
枯葉を蹴散らして
風が吹く
冷たい足跡
風紋の麦畑
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「壊されるもの 創られるもの」
時間によって
破壊されたものは
時間によって
再び創られていく
創造するということは
破壊することと
同義語なのだと
くたびれ果てた
建築家は言う
芸術家は笑う
建築家が創り
芸術家が壊す

闇と光のなかに
同時に存在する
建造物は
オブジェは
言葉によって語られる
手筈は整えられた
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「初市」
人込みを分けて
睨んでいる
天下を見下ろして
睨んでいる
ダルマの群
今年こそ
もっといいこと
ありますように
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「半月群雲」
気持ち半分
月模様
あっちへ行こうか
こっちへ行こうか
ついて行こうか
さよならしよか
お月様に
聞いてみよか
お月様も
気持ち半分
乱れ月
雲にかくれて
知らん顔
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短歌
友ら待つ
花苗分かち
草むしり
萌黄親しむ
晩秋の庭
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「楽の音」
旋律をなでる
笑いながら
さえずりながら
鳥たちのように
舞台の上を弾む
若さ

慈しむように
抱える音色
傷つかないように
そうっと奏でる
若さ
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「仕事始め」
いつものように
鍵を開け
仕事をはじめる
つかの間の
緊張感
変わりばえのない
日常がはじまる
重ねる時間は
積もる
明日への礎
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「木枯らし」
風吹く日ざしに
芽ぎる木々
我も耐えるや
蒼き空の下
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「薄月」
藍の空に銀の舟
ひっそりうかべて
流します

帰りには
あのこを乗せて
戻っておくれ

明るい星が
座標軸
迷わぬように
路案内

あのこが手を振る
向こう岸
かならずきっと
乗せておくれ

藍の空を舟がいく
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「祝日」
悠久の時
寿ぐ

鬨の声は
記憶の外に

光は
胸の奥に
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