記憶の断片
一年生のとき

夏の夜の風呂の中

言い争い 怒鳴り声 罵声 暴力
母の泣き叫ぶ声 
もう戻らないと家を出て行く

すぐさま風呂を飛び出して
着るものも着ず 濡れた体のまま
素足で後を追いかけていった

駅のロータリーを捜しまわったが
どこにも母は見つからなかった

裸の子供を往来する人たちが物珍しそうに見てはいたが
子供は涙だけを浮かべていた

その夜 母は帰って来なかった