いっぽさんへの投稿詩
  「空からの落し物」

雷は 自然の摂理で落ちてくる

爆弾は 人をめがけて落ちてくる

  「ふたつの孤独について」

人の気配のない孤独は すごく残酷な淋しさだ

たとえば隣の部屋に人の気配を感じられる孤独

は 最高に優雅だ

  「変化について」

変化とは なにかちがう状態になることをいうのだが 
存在の本質は変化そのものの気がする。
つまり一旦存在というものを認めると
つぎは存続のために変化しつづける。
変化の方向性は つぎにさらに変化でき得る
ものへとすすむ。
変容を受け入れないものにはすすんでいかない。

だから 自分も変化することを拒否しない。
ちがう次元の話であっても いや存在しているのだから 自分も含まれてよい。

  「神について」

神は

原始人を創れても

現代人はつくれまい

  「カフェにて �V」

お店によってまた雰囲気はかわる
つぎにふたりが逢ったのは心斎橋のはずれ
長堀通りの北側
一方通行のほそいとおりから急な階段をのぼると 木造というイメージで統一された床とテーブルの空間に しゃれた音楽がながれている
カテキンが含まれているときいた紅茶をオーダーする
なぜレモンなの
えっ ああ ミルクだとなんかちがうものに
なっちゃうみたいで
ふふ へんなところ繊細
多少気楽な気分
でも今日の曲調ばらばらだな
ユーリカとおもったらつぎはJAZZANOVAのリミックス S.ワンダーとおもったらこんどは
サイレント ポエツ
おとこは気分がよかった
おとこは有利だった
おとこはほかにも彼女らしきひとをつくった
そうしないと目のまえの女性と対等に向かえないような気がしていた
なんの問題もない
複雑な関係をもとめているわけではない
悩みの相談をうけているわけでもない
ただ偶然ふたりに共有する時間があって 
その時間につきあっているという感じ
棚にポツンと置かれた透明のちいさな花瓶が
虹色にきらめく
花瓶もゆっくりタイムとつきあっている
まぁこんな日もいいな
彼女はリズムをとるようにうなづいた

  「カフェにて �U」

また今度はいいひとがみつかりますよ
ねぇ おとうさん
あわてるこたぁないよ
もうずいぶん歳とっちゃったわ
まだいってないお友達もいらっしゃるでしょ
二度目いってない子はいるわね
そういう意味じゃありませんよ もうこの子っ
たら
ゆっくりでいいんだ ずっとでもいいんだ
そうしょうかしら
おとうさん 本気にしますよ この子は
それなりに店内は混んでいて少々暑くなっていた
自然と隣のせきの会話は耳にはいってくる
すきなようにすれば くちを閉ざしつつ叫ぶ
そんなことより なぜ彼女は来なかったんだ
あの夜 別れ際 なぜさしだした手にこたえて
くれなかったんだ
べつなことでも考えていたのか
さしだした手の意味がわからなかったのか
かるく手を振っただけで...
こんなこと気にしている僕がおかしいのか
たしかに僕と彼女はまだなんのつながりもない
ようやくともだちと呼べるくらいの関係と
思われているのかもしれない
あぁ それだけにいまイライラしている自分が
悲しい
もうずっと来なくていい
もう一生逢ってやらないぞ
からだじゅうのすみずみに響きわたるくらい
あたまで叫んだ
隣の席はまた違うひとたちに変わっていた
そろそろ自分も出ようか
追加オーダーの声が店内に響きわたった

  「広い公園にて」

芝生
娯楽
音楽
寝ころぶ
家族づれ
若者たちの遊び
青空や雲
犬と幼い子
昔のこと
今のこと
幸せなこと
そうでもないこと
まあいいやとか
これでいいのかなとか

  「振向茶屋」

それはひとつの方法であって決定ではなかった
まだ自分というものがどのような道筋をたどってゆくのかということを おぼろげにしか
追い求めていないのだ
今なぜこの生き方を選択しているのかは
ほとんど偶然の成り行きでよかった
それほどに今までの自分には裏切られ傷つきも
している
それほどに訳のわからない神秘な人生を歩まされている
希望に満ちてもいないし といって落胆もしていない
私はいま実は人生の路の茶屋に腰をおろしている
そういう場面だからほっとひといきいれている
これが自分の生き方の方法であるんだろう
決定的にこれが自分のすすむべきみちだなどとは考えもしない
この生き様が絵になるかどうか
それはもっともっと後のはなしであろう

  「公園にて」

鳩よ飛べ

平和のない国まで

鳩曰く わたしは飛んで来ましたと

  「カフェにて」

実際よくわからなかった
なぜここにふたりいるのか
駅に近い高架下の喫茶にはそれほどひとはいなかった
照明はほのぐらい感じで夕闇と混ざっている
はなしはとぎれたまま静かに流れていた
まるで映像の終わった画面をうつろに眺めているように 無駄にすすみゆく時を やるせなく
見送っていた
彼女がやつれた氷の浮かぶグラスを傾けたとき
わたしはようやくけだるいまなざしを
視線に変えた
どうしょう
どうするつもり
そういえばまた沈黙がふたりを包んでしまうと
わかっているのに
溜息に染まったその言葉しか
ふたりには選ぶことができなかった