風来坊さんからの季節の情景ぽえむ!
   「ホタル」



梅雨の頃の夕暮れは
厚い雲のせいか少し駆け足

穂を傾ける
麦の畑を少女が一人たたずむ

走り疲れたか膝に両手を置き
背中を揺らす

やがてその背の揺れはおさまり
少女は地面に向けていた顔を静かに上げ

そして歩き出す
てらいもなく強い瞳

暮れ行く山の道に
まるで道案内をするかのように

ホタルが先立つ
小さな明かり

生まれいずる微笑み
小さな旅 二人の旅