おとなの詩集 「愛のせいくらべ」�U
17.どうしょう
  君のマフラー
  僕の部屋に残して帰った
  君の香りだけ残して
  もう許さないぞって
  心に決めたばっかりなのに
  どうしょう
  君のマフラー


18.いつのまにか
  夜の街を歩いてる
  何も考えつくことなく
  ただ 手に君のマフラーを入れた
  紙袋を持って
  ゆっくりと うつむき加減に…
  時間はずっと止まっている
  というか あのこと以前に戻している
  君の住む街は
  まだ起きているかな
  君の住む街は
  まだ明かりが綺麗に輝いているだろうか

  僕はぎゅっと紙袋のひもを
  握りしめた


19.君のわがままなずるさと
  僕のわがままなずるさとが
  背比べしている


20.僕はまだ夜の街を歩いていた
  その頃 君は僕の部屋のノブに
  手をのばそうかどうか
  ためらっていた
  僕はまだ君の街には到着していない
  
  君は僕の部屋のまえで
  携帯に手をやった
  
  二人には まだ運命の糸は
  つながっているんだろうか


21.僕はタクシーをひろった
  もう景色なんか目に入らない
  君の携帯の声がぐるぐる
  あたまの中をかけめぐる
  どうしてなんだ
  どうして忘れようとしていた僕を
  こんなに簡単に独占するんだ


22.君に告げる言葉を
  必死に探した
  車はそんなにも揺れていないのに
  心の中は大波をうけた小船のように
  おそろしいほど揺れる
  もう一度君に逢えるというときめきを
  何度もかき消そうとして

23.僕は何故か走っていた
  僕の部屋に向かって走っていた
  暗がりのなかで
  ちいさくぽつんと立っている君を見た
  
  今までのあれこれの言葉が吹っ飛んだ
  ぎゅっと抱きしめている
  もうこんな涙は
  流させないよ
  そうこころで叫んでいた


24.君のあるかぎりの情熱と
  僕のあるかぎりの情熱とが
  背比べしている