おとなの詩集  晩秋篇 1
1.しぼんでゆく風船の中で
  どうやって今までの空間を
  味わい続けようかと 首を傾げている
  そんな風景が 目に浮かぶ
  そして鏡にも そんな自分が 幻影でなく
  映ってる気がする

2.その道は まだ続いている
  途中で切れはしないだろう
  だけど その道がちゃんと
  思うところに続いているかどうかは
  さっぱり分からないのである

3.余りに自動化され
  生きている実感が薄れてゆく
  ドアは近づくと開き
  カードを持っていると
  ゲートがあき
  さらに欲しいものが手に入る
  まるで 自分は
  透明人間か お化けのような存在だ

4.知らないうちに 私たちは
  何の所属か分からなくなっている
  国民 市民 会社 学校 クラブ 家族
  いろいろあるみたいだけど
  なぜか 妙に狭い
  妙に軽い

5.人を愛するということは
  非常に ときめくことであるけど
  いつのまにか 思わぬ人から
  愛されていることが分かった時の
  自分のリアクションが
  その人の余裕度を
  表すのかもしれない

6.あそこまでショックなことが起きないと
  人類の幸不幸のアンバランスに気づけない
  或いは 平準化する必要性に気づけないか
  何かそういう状況にある風だ
  犠牲者は未来の人類なのかもしれない

7.煙草を吸って 活性化すぎる感性を
  抑制している若き女性たち
  その向こうの禁煙席で
  覇気なく 背中を丸めた男性陣が
  ひそひそと ささやきあっている
  奇妙!!