狭い公園にて
このあたりは丘陵地帯が開発された商業ビルと新興住宅が混在している地域であった
ひとつひとつの空間がおおきく、勤めているか住んでいる人にとってはゆったりとのんびりとしたいい環境だ
ところがあるビルの中のひとつの会社を探しにやってきた私には逆境そのものであった
道路からもビルの中に入っている会社が確認できるように工夫しろよ  21世紀だぜ!
バーガーショップでさえ店内に申し込みに行かなくとも各種の商品を車の中から選べてしかもその場ですべて商用は済まされる
20世紀よりすでにこういうシステムが出来上がっているというのに
さすがに番地はビルの角に表示されていた
こちらは住所がわかっている
みつけられるのは時間の問題だった
ほぼ番地に該当するところまでやってきた
メイン道路から曲がってとりあえず車を停めた
カバンに必要なものをいれ上着を着る
そとは寒風がわがもの顔で吹き荒れている
フン すぐビルの中に入るさ
とは言ったがおおきなビルでしかも余裕をもって建てられたものだから本当の入り口までがけっこう遠い
やっと入るとさすがにそこまでは寒風は追いかけて来れない
フフフ 
しかしそこのテナント案内板になんと目的の会社の名前がない
名前を伏せているのか
そんな...電話帳じゃあるまいし
番地は間違っていないがその後が違うのか
表で寒風が早く出てこいよと口笛を吹いている
表情は変えずになにも考えないようにまっすぐ
車にむかう
乗り込むとブルッとからだが震えた
つぎに飛び込んだビルは間違っていなかったが
物品搬入専用のエレベ-タ-しかないフロアだけというおまけつきだった
ところでこの近くには車を停めておける適当な場所がなかった
それでちょっと離れた住宅区域にそっと停めた
住民の目を気にしつつ ...
ビルの近くにはわざわざ交番がつくられてあり
なんとレッカー車が不気味に白い排気を風にたなびかせて停まっていた
なんでこんな日におるの?
心配でそそくさと仕事を片付ける
車に戻り座席にぐったりからだを沈めると今度は膀胱が圧迫されているのに気づいた
さぁ困った こんなところには何もない
狭い公園以外 なにもない
なにもないことはないか
狭い公園がある
もう迷い考えている時間はなかった
ほてった頬にこの寒風は心地よかった