言葉足らず
大切なことが伝えられない欠点のある人間がいる。言語障害ではないのだが、舌足らずと言うべきか。

弁解するときは雄弁になる。護身のためである。それでいて自分は相手に話したと錯覚している。

今の大人に類似した人間が増えているのも事実である。特に、官僚に非情に多いタイプでもある。

我が家にも一人それに似た人間がいる。今度の日曜日日舞の発表会がある。

晴れ着一式を持たせてあるのが、今、どこにあるか分からないと言う。従姉妹、親戚に何かあると貸し出していた。

自分の子供がきるときになったら、見当たらない。関係者に聞くと皆、異口同音にそちらへ返したと言う。

しかし、ある筈の箪笥には見当たらないのである。あと三日では注文して出来上がるまでの時間がない。

貸衣装でも手配する方法以外は作がない。本人は済まして踊りの先生から借りてきたと帯と着物を持ってきた。

それだけでは間に合わないのだ。肌襦袢がないと中の襟がない。茶道と華道を習ったときに自分が和服を幾度と泣く北湖とは忘れているらしい。

他人に着せられていたからだろうか。昔人間は教わるのではなく見て覚えるのだが、今様はそれは通用しないらしい。