阿津さんからの ”おはなし”
‘魔法使い…’


昔、3000年も生きているという魔法使いに
出会った。

キリスト様と、杯を交わしたり。
楊貴妃と、お茶を飲んだり。
そんな話を聞くのが楽しみだった。

でも、そんな魔法使いにも、できないことが
ひとつだけあった。
それは、時間を止めることだった。
たとえ魔法使いでも、時をあやつることは
できないのだという。

会うたび、別れの時間が近づくと、
私は泣いた。
5分でも時間を止めてと、泣いた。
そうするときまって、また会えるから、と、
優しく抱きしめてくれた。

でも、あるクリスマスを最後に、
その魔法使いは現れなくなった。
その時だって、優しく抱きしめてくれた
はずだったのに…

私は思う。
きっと、もう2度、出会うことないだろう。
心に、思い出と笑顔だけを残した
魔法使いさんには…