うっそうとした芝生  from おとなの詩集
1.外気が気になる
  暖炉のそばで 思い悩む
  想像の木枯らしで じっとこもっている


2.山登りはどうした?
  きれいな花をずっと見つめていたって!
  曲線の風景にみとれていたって!
  日が傾きつつある今
  自分の中の時間は止まったままである


3.充実感が旅だってからもう何年にもなる
  しかも逢いたいとも思っていない


4.人生に疲れたらおいでよ
  来ました
  いま満杯です しばらくお待ち下さい


5.君から手渡された切符
  行き先 別々だったんだね
  でもね 帰るところは
  君との思い出でしかないんだよ


6.ハートがふらふら浮遊して
  じぶんが夢の中で迷子になっている
  しかも呼び出しもない


7.落胆をおもちゃにしている
  でも もう それは咎めない
  何かあるんだろうから


8.きのうの手紙をまだ開けずに
  返事の言葉に思い悩んでいる


9.僕の出番がやってきた
  僕は舞台中央にすすんだ
  そして台本通り
  無言を演じた
  観客も沈黙で応えた


10.弱音の向こうに本気を溜め込んでる
  つもりでいたが
  いまそっと奥をのぞいたら
  弱気が昼寝していた


11.言い分けはいくつか用意した
  あとは 現実に向き合える自分を
  見つけねば


12.二枚の鏡があって
  どちらにも部屋しか映っていなかった
  僕はそのあいだにいるんだと気づいた
  疲れきった自分を見なくてホッとしつつ


13.適当な 猛省


14.自分を甘やかしたくないプライドと
  自分を甘やかしたい癖とが
  僕の腹心となっている


15.この身をうっそうとした森林に隠したいと
   広大な芝生のうえを探し回っている