首切ぎす嬢の ルージュ...
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《 ・・・

  十年ほど前(*1969頃)になるか。
  唐十郎は、新宿戸山ハイツの草ぼうぼうの荒地で、
  「腰巻お仙」の野外芝居をうった。
  今や戸山ハイツは高層団地と化し
  当時の面影はコンクリートの下にうめたてられ、
  当時、お仙の役をしていた女優藤原マキは
  今やつげ義春の女房となり、
  たかだか十年の月日の移りかわりの大きさに驚かされるが、
  その時、とび出しナイフで唐の命をねらっている役者がいた。

  その役者は、唐が某児童劇団に属していた時の先生で、
  当時、頭皮が三倍くらい固くなる奇病にかかり、
  「自分は半年後に死ぬ」と信じていたらしい。
  その男の役柄は、土男であり、出番がくるまで、
  地面に穴を掘り、地面にもぐっている役であった。
  (・・・)その男が芝居が終わってから闇夜のベンチにすわり、
  ナイフを持って唐が来るのを待っていた。
  かすかな星明りで、ナイフが青く鈍って光っていた。

  ・・・ 》 ~ 嵐山光三郎


  *


  こんなエピソードを 思い出しました。

  その男が、土の中で待機していることを、
  みなが忘れてしまった、という話もあるそうなのですが...


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  螽斯化 :

  はたおり虫・ぎっちょんは、一回に九十九の子を産むことから
  子孫の繁栄することにたとえる。[太平記]

  ~ 角川「漢和中辞典」


  いま めの前に 虫偏の漢字がいっぱいです





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