記憶。
     210316church      

 すべてがごく迅速に、確実に、自然に事が運んだので、もう何も覚えていない。
 ただひとつだけ、記憶がある。
 村の入口のところで、受持の看護婦が私に語った。
 彼女はその顔付きにつり合わぬふしぎな声をしていた。
 音楽的な震えるような声だ。 
 「ゆっくり行くと、日射病にかかる恐れがあります。
  けれどもいそぎ過ぎると、汗をかいて、教会で寒さがします」

 と彼女はいった。
 彼女は正しい。逃げ道はないのだ。
                   「異邦人」(カミュ)






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 なんの脈絡もなく昔読んだ小説の一節が蘇りました。

 日射病とはまったく無縁な春まだ遠い3月の北海道です。



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