母から娘へ 
順ちゃん 手紙おくれてごめんね。
もっと早く出すつもりでしたが、なにしろ年ですから。本調子になるのが 大変でした。
旅行の次の日は 7時まで眠ってしまい、あわてて布団をしまうのがやっとでした。
でも、本当にすてきな旅行に連れていってもらって、お母さんは これで何も思い残すことはありません。

まだ お母さん位の年では、京都旅行になんていっている人は
まわりにあまりありません。

今日はすっかり旅行ボケもとれて、元気に働いています。
安心してね。
昨日は公休日なので、スクラップブックを買ってきて、
絵葉書やら、思い出のパンフレットを みんな張りました。
どれを見ても、その時のことが思い出され、とても楽しいですよ。
今 手紙を書いている(こたつ)の上では 大原で買った水盆に茶の木の花が活けてあります。
真白い花びらに、黄色いめしべが咲き、とてもすてきです。
そっと顔をよせると 甘い香りがして、あの大原の金日道を
思い出します。
それから 三十三間堂、寂光院、平安神宮。円山公園、
時代まつり、夜の観光バス。
本当にぜいたくな旅行をさせてもらいました。 お母さんは
こうやって書いていて 生きていてよかったなあと思いながら
泣けてきて仕方ありません。
順ちゃん 本当に、ありがとう。
これからも お母さんを見捨てないでね。
仲良くしていきましょうね。

では また お手紙くださいね。

今朝は 小雨が降っています。 これからは 一雨ごとに寒くなります。
風をひかないように、気をつけてね。 さようなら。

追伸: お母さんは いつでも一人で家にいます。
淋しくなったら 職場に電話してくれれば 夕食の支度を
待っています。