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           《 ・・・


             けれどもお産をするとなると、
             父親は電話でもかけるように母親の生殖器に口をつけ、
             「お前はこの世界へ生まれて来るかどうか、
              よく考えた上で返事をしろ」と大きな声で尋ねるのです。

             ・・・

             すると細君の腹の中の子は多少気兼でもしていると見え、
             こう小声に返事をしました。
             「僕は生まれたくはありません。
              第一僕のお父さんの遺伝は(・・・)。
              その上僕は河童的存在を悪いと信じていますから」


             ・・・ 》



            = 河童 : 芥川龍之介 より































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