病室にて
ピンクとオレンジとの中間のような淡い色のカーテン。
外科病棟より、内科病棟は 全体に落ち着いた雰囲気。
父の病室は 4人部屋で みな 80歳前後、と 
高齢である。
ゆうべ わたしが着くと、父は 電動ベッドの上
身体を起こし、備え付けられたテーブルの上で 夕食を
食べ始めていた。
間に合った、と わたしは思った。
6時をとうに過ぎていたが、面会時間の終了は 7時半だから
じゅうぶん時間はある。
「こんばんはあ」
父や ほかのひとたちに呼びかけるようなかたちで
夕べわたしは 病室を訪れた。
サイドテーブルには 6日の日にわたしが届けた
米寿のお祝いの色紙が きちんと立てかけてあった。
「鮎。鮎 買ってきたよ。」
ごそごそと 包みを開き わたしは プラスティックの箱に
大きく横たわっている 塩焼きの鮎を 父の目の前に
捧げもって 見せた。
「骨が 入るといけないから とってあげるね」
引き出しのなかから、フォークを取り出し、鮎の皮をはがし
柔らかそうな身を選んで 小皿のうえに 取り出した。
父は 食べていたかゆに はしをいれたまま、じっと
わたしの手元をみている。
そうして 小皿の鮎の身をすこしずつ 自分で口に 運んだ。
「焼きたての鮎のほうが 美味しいけれど がまんしてね」
わたしは こころのなかで そっと つぶやく。
昔 わたしたち家族は 夏になると必ず、父が釣ってきた
鮎を たくさん食べた。
母は 父の腰のびくから まだぴんぴんした美しい色の鮎を
盆ざるにとり、塩をし、それから 炭火でじっくりと
焼き上げた。
川魚の泥臭さはみじんもなく、香ばしい匂いが 部屋中に
たちこめる。
鮎の皮が ぷくりとふくれ、こんがりといい色の焼き色が
つく。
いちどに十数匹と釣ることもある鮎を、家では到底たべきれず
近所に配ることはもちろん、姉は ある時期、駅前の
料亭へ 請われて持っていったこともある。
家では あの頃、「夏に鮎を食べること」は ちょうど
これからの時期、 食卓に しげくサンマがのるのと同じくらい
日常茶飯事のことだったのである。

編集 十六夜 :  風さま ありがとうございます。 わたしも。。風さまと同様、今 しあわせですよ。。(微笑  着物は 昔のように これからたくさん着る機会を持ちたいと思っているんです♪ 
編集 : 鮎、お父様、喜ばれたでしょうね・・十六夜様は、お優しいですね・・でも、少し心配です・・酔っ払いの戯言ですので、聞き流してね・・おやすみなさい