不定形の集合体
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         《 ・・・

           天地開闢けしはじめ 国なお稚く

           砂土浮きただようて

           海月の海水に泳げるがごとく

           浮脂の水の上に漂えるがごとく

           未だ固まらざりし時に

           葦牙のようなる物

           おのずから其中に成り出でて

           此物の萌え騰りて

           大虚の中に登りたるによりて

           高天の原に化生でたまえる ・・・ 》


           = 先代旧事本紀









         《 ・・・

           次に国稚く 浮きし脂の如くして

           久羅下なすただよへる時

           葦牙の如く萌え騰る物に因りて成りませる神の名は

           宇摩志阿斯詞備比古遅神 ・・・ 》


           = 古事記









         《 ・・・

           時に天地の中に一物生まれリ

           状葦牙の如し

           便ち化為りませる神を国常立尊と號す ・・・ 》


           = 日本書紀









         参照 / 自然と日本人 : 樋口清之














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         【葦牙】 あしかび


          = あしづの 葦角 









         【葦角】 あしづの


          葦の若芽 , あしかび , あしわか


          季語 ; 春


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          先がとがって、角に似ているところから










         【牙】 かび


          植物の芽


          *


          動詞「かびる(黴)」の 名詞化か ....









         【黴】 かび :


          動詞 「かびる(黴)」 の 名詞化



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          1. 真菌類のうち

             菌糸がからみ合った

             不定形の集合体をなすものの総称


             藻菌類、子嚢菌類の多く

             および 担子菌類の一部に見られる


             《季・夏》




          2. いつかは朽ちて

             むなしくなってしまうもの

             − の たとえ


             無価値なもの




           = 国語大辞典(新装版)小学館 1988














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           「黴」


           by 徳田秋声




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           小説

           明治四四年発表 


           主人公の 無気力で荒れた生活を

           苦しいタッチで描く














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