2004 06/04 00:26
Category : 001
.
《 ・・・
ひとりが別のひとりのために身を退ける。
ひとりがもうひとりのために存在する
( l’un est pour l’autre )。
そのせいで語り手は深い喜びを感じる。
その喜びが語り手を存在のはるか高みへと
上昇させるように思われる。
けれどもそれは偽りの出来事であり、
たちまち無名性の薄暗い冷気に、
暗い中庭の奥を見つめている語り手を凍えさせる
宇宙的な冷気に、混じり合ってしまう。
この終わりなき空間の沈黙・・・存在の広大さと、
地上でこれまで殺し合ってきたひとびとの群れを前にしたとき、
他人に一歩の道を譲るような不確かな動作が
いったいなんでありえよう。
どうでもいいような機械的動作だ!
卓越した知性を行使して
案ずるに足るような問題ではないにもかかわらず、
この動作はそれを軽んじ、それを押し殺そうとする沈黙のうちで、
絶え間ないざわめきの音を立て続ける。
・・・ 》
= エマニュエル・レヴィナス / 内田 樹 訳
『白日の狂気』についての演習 〜 より
.
《 ・・・
ひとりが別のひとりのために身を退ける。
ひとりがもうひとりのために存在する
( l’un est pour l’autre )。
そのせいで語り手は深い喜びを感じる。
その喜びが語り手を存在のはるか高みへと
上昇させるように思われる。
けれどもそれは偽りの出来事であり、
たちまち無名性の薄暗い冷気に、
暗い中庭の奥を見つめている語り手を凍えさせる
宇宙的な冷気に、混じり合ってしまう。
この終わりなき空間の沈黙・・・存在の広大さと、
地上でこれまで殺し合ってきたひとびとの群れを前にしたとき、
他人に一歩の道を譲るような不確かな動作が
いったいなんでありえよう。
どうでもいいような機械的動作だ!
卓越した知性を行使して
案ずるに足るような問題ではないにもかかわらず、
この動作はそれを軽んじ、それを押し殺そうとする沈黙のうちで、
絶え間ないざわめきの音を立て続ける。
・・・ 》
= エマニュエル・レヴィナス / 内田 樹 訳
『白日の狂気』についての演習 〜 より
.