岩手の養鶏農家も大打撃
岩手の養鶏農家も大打撃=えさ不足で大量殺処分―生産高国内3位・東日本大震災

時事通信 4月30日(土)6時17分配信

 東日本大震災は、津波被害を免れた岩手県の養鶏農家にも大きな打撃を与えた。

地震に伴う停電や津波で、飼料工場などが操業停止に陥り、農家は弱ったニワトリを大量に殺処分。

同県の鶏肉生産高は国内3位で、高病原性鳥インフルエンザ問題に揺れる日本の鶏肉産業にとっても痛手となった。

 陸前高田市の高台で「タカハシファーム」を運営する高橋昭一さん(59)。

生まれたばかりのひよこを仕入れ、60日程度かけて育てた後、大船渡市の食肉メーカーに出荷していた。

「子供たちが安心して食べられるものをつくりたい」と、抗生物質を使わずに育てたニワトリが自慢だった。

 津波で市役所などが流された市中心部とは違い、5万羽を飼っていた養鶏場に大きな被害はなかった。

だが、宮城県石巻市や青森県八戸市など沿岸部にある飼料工場が被災して、えさが入手できなくなった上、出荷先のメーカーの工場も停止。

1週間は様子を見たが、えさ不足で弱ったニワトリは病気にかかりやすいため、全て処分して埋めた。

 ひよこの購入代や飼育に使ったえさ代など、被害は2000万円に上る。

「取引先からは請求はしない」と言われているが、3月から出荷していないため、収入もない。

高橋さんは「補償制度もなく、立ち上がるのは大変だ」と語る。

 1月以降、主要産地の鹿児島県や宮崎県などで鳥インフルエンザの感染例が相次いで確認され、

岩手県への期待が高まっていただけに、「国内の鶏肉産業にとってもかなりの打撃」と高橋さん。

7月には飼育を再開したい考えだが、「完全に元に戻るまでには2年はかかる」とうつむいた。

 岩手県畜産課によると、震災の影響で養鶏農家のニワトリは4月下旬までに約270万羽が死んだという。