真っ白なホウロウのソースパン
ステンレスのキッチンスケール

レモン色のケトル

その どれもが まるで似合わない場所で

ただ 唯一の救いは

東に窓があること

朝陽が 差し込めば きらきらと 希望のひかりは あふれ

つかの間の しあわせを 感じることもできる

わたしは おもった

いっそ ここは 異国と思おう と。

ここは 例えば フランスの片田舎

小鳥や ちいさな花たちが
わたしの言葉を 解してくれるだろう

そのとき わたしは

笹倉鉄平の あの画を
思い出していた

わたしが初めて見た 鉄平先生の作品

ひとめ見るなり 涙が あふれて とまらなかった

「寿の窓辺」