インコの死
昔 まだ 家族4人で住んでいた頃 みんなでとても可愛がっていた オスのインコがいた。

賢くて わたしたちが 教える言葉を つぎつぎ覚え 首を愛らしくかしげながら 自分の名前を 自分で ぴ~ ちゃんっ♪と 呼んだりして わたしたちを 笑わせた。

あれは 姉が中学生 わたしが まだ 小学生の頃だった

わたしたちが 学校から 帰ると いつも 「おかえり~♪」と 迎えてくれる ぴーちゃんの姿が なかった。

父が 悲しそうな 顔をして 自分が 間違えて 踏んで 死なせてしまったことを わたしたちに告げた。

姉とわたしは やりきれない気持ちで その日 可愛がっていた ぴーちゃんを 庭に埋め 小さなお墓をつくってやった。

姉は 泣いていた。

わたしもまた 張り裂けそうな 悲しみを こらえつつ 黙々と 姉を手伝った。

わたしは 悲しかったけれど 泣いてはいなかった。

インコの死も 悲しかったけれど 誤って 自分の 愛する生き物を殺してしまった 父の やりばのない かなしみのことを 考えていた。

ブラウスの袖をまくり 庭の土を 何度も 墓にかけながら わたしは こころのなかで どうやって 父を 慰めようかと 必死で考えていた。

そのとき 姉が 言った。

「あなたは 薄情だからね。動物 あまり 好きじやないものね。」