水仙の蕾
多摩川より 北へと 

ゆっくりカーブする坂を 登りつめたところに 

わが家はあります。

西側に位置する 家の前を 掃き清め、 プランターの水仙に

如雨露(じょうろ)で 水遣りをしていると

いろいろなひとが 通りかかって 挨拶をしてゆきます。

下から 杖をついて 休みやすみ上ってきた おじいさんが

わたしの 手元をみて 「水仙ですか?」と 声を

かけてきました。

「ええ やっと蕾が。。」 わたしは 水仙の葉の根元に

水をふんわり掛けながら にっこり 返事を返します。

おじいさんは また ゆっくりゆっくりと

大通りのほうへ 歩いていきます。

下からは 大きな車が 容赦ないスピードで 上ってきます。

おじいさんは われ関せずと 道の端に寄るわけでもなく。。

わたしは つい 「どうぞ お気をつけて」と

大きく 呼びかけました。

もちろん なにかのときは 咄嗟に おじいさんの手を掴んででも

車を避けて 道へ寄せなければなりません。

時計は 12時半。

また 水仙の蕾が おおきく膨らむ頃、 おじいさんが

この場所を のぞいてくれると いいな、と

思ったことでした。

                    izayoi