薔薇の実
天神の境内を通り抜け、駅へと向かう途中に

ちいさなパン屋さんがある。

その名前も ピッコロと 可愛らしい。

店構えは地味だが ガラガラと引き戸を開けると

こうばしいパンの暖かな香りに包まれる。

なじみのお客だろうか 近所に住む老夫婦が

クリーム色のトレイとトングをもって パンを選んでいる。

あとからはいったわたしは すこし遠慮気味に

そっとトレイを一枚とりあげる。

店は それくらい狭い。(微笑