桃の実
出掛けに 思いついて

きのうから冷やしておいた 桃の大きいほうを

病人へ あげてゆきました。

「食べてね?

 なるべく 早く 帰ってきますからね。。」



わたしは ふと

太宰の小説のなかのシーンを 思い出した。

しくしく ダダをこねるように泣く 恋人に

太宰が 黙って 桃を剥いて 差し出す

あのシーンである。