博士が愛した数式
果ての果てまで循環する数と、決して正体を見せない虚ろな数が、
簡潔な軌跡を描き、一点に着地する。
どこにも円は登場しないのに、予期せぬ宙からπがeの元に舞い下り、
恥ずかしがり屋のiと握手する。
彼らは身を寄せ合い、じっと息をひそめているのだが、
一人の人間が一つだけ足し算をした途端、何の前触れもなく世界が転換する。すべてが0に抱き留められる。

「博士が愛した数式」より