こういうことがあるから、仕事に情熱を傾けられるというものさ
ヘンな外車ばかり売ってる、得意先の「ガレージ『A』」
どうヘンかというと、前に書いたが、捜したら日記が消えていた
とりあえず、7月13日の「見る日記」にあるような
外車といっても、BENZ、BMW、VW、FORD、GMのようなメジャーでなく
例えばアルファ、ルノー、シトロエン、SAAB、プジョー、FIAT、現代など
そこはかとなくマイナーな、いや失礼
玄人好みの外車ばかり売っている
それも、かなりの旧車まで、扱いは広い
例えば、鈴鹿のF1で、本走行前にレーサー達が旧車に乗ってサーキットをパレードするのだが
それに自分の車を出して、ラルフ・シューマッハが同乗したそうだ

当然、ちょっと偏屈で変わっている
俺は好きなんだが、みんな電話に出ると嫌がって俺に回す

その社長が夕方、俺に泣きついてきた
MG(英国車)のトランクに、キーを入れて閉めてしまったらしい
オープンカーなので、防犯上トランクオープナーのレバーはない
キーで開けるしかないのだが、そのキーはトランクの中・・・
明日朝、お客さんが車を引き取りにくるらしい
JAFを呼んで2時間かかっても、鍵はあかなかったそうだ

なんとか、キーを作ってくれ、と云う

国産車ならまだしも、外車のキー製作はやったことがない
社長は留守だし
だいいち、キーナンバーも、キーコードも、ピッチもマスターキーも
なんにも解らない

断ろうとする俺に有無を言わせず、ドアのキーシリンダーを外して
社員が持ってきてしまった
さあ、作れってか?

残務整理でパニックになっているところへ持ってこられて呆然としてしまった
A社長は10分ごとに社員のケータイにTEL入れて、進捗状況を報告させている
「作れたとしても、午前様になるよ」
「覚悟の上です」
彼の目がすわっている

でも、会話を聞いてるうち、どうもその若い社員(整備工)が
キーを閉じ込んでしまったらしい
どうりで青い顔をしているわけだ

よし
オトコになるぜ

できるまで帰らないという彼をなだめて
必ず明日朝までに作ると男の約束をして
ようやく彼は帰った

それからは、獅子奮迅
キーシリンダーを分解し洗浄、構造確認
奇跡的に在庫していた、たった一本のROVER用のブランクキー
失敗は許されない
時間をかけ、丹念に削り、削ってはそろい具合を見て
慎重に、大胆に、集中して

キーはできた
ちゃんとくるくる、まわるぜ
うれぴぃ〜!
「見る日記」に載せてしまおう

おかげで今まで残務処理
でも、こういう仕事は気分がいいから
あんまり疲れないな

これで、貸しがまたひとつ
前は写真のルノー・スポルト・スピーデルに乗せてもらったから

今度はジャガーか、モークか、ポルシェだな