2009年10月の記事


想ひ
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   パソコンも デジカメさへもそのままに
           逝きし兄への 想ひせつなく
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風景
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   人ひとり 居なくなろうと世の中は
          いつもと何も 変わらぬ風景
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花束
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   リハビリの 仲間一同より届く
           心づくしの 文と花束
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   気楽さと 背中合わせの寂しさは
          いつも寄り添う 影の如くに
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ひとつ
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   タジン鍋 買えばふたつでひとセット
          ひとつ取りだし 使う虚しさ
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老い
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   一区切り ついて安堵も束の間に
           独り身ゆえの 老いの行く先
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労い
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   他人の手を 借りず済ませし煩雑な
            手続き終えて 我を労う
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三七日
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   バタバタと 過ごせし時のこの速さ
           兄を送りて 早も三七日
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   手付かずの 兄の寝起きしその部屋の
            布団に今日も 眠る飼い猫
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純粋
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   純粋な だけじゃ生きてはいけないと
         嫌でも思う 手続きの日々
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   九十の 友と語らうひとときの
         母の想ひで 兄の想ひで
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世帯主
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   肩書きを 持たぬ我が身に「世帯主」
          やけに重たく 自覚促す
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相続
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   相続と 言葉ばかりは大層な
         兄の名義の 預金通帳
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寡黙
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   口数の 少なき兄を尚更に
         寡黙にさせし 失語症なり
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ツケ
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   何もかも 兄に頼りて過ぎし日の
          ツケと呼ぶには あまりにも酷
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皮肉
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   若き日の 引篭りせしあの日々を
          取り戻すよな 今のこの日々
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重圧
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   残されし 雑務の多さずっしりと
          重く我が身に 圧しかかる今
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順序
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   物事の 順序通りに我が家は
          父、母、兄と 順に見送る
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面影
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  諍いも 確執さへも消え去りて
          兄の面影 今は穏やか
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別れ
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  唐突に 眠るがごとく逝く人は
          想ひの欠片 ひとつ残さず
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