2012年09月の記事


三國廉太郎談「虚と実を生きる」
三國廉太郎談「虚と実を生きる」。三國廉太郎と言えば、本邦映画の華やかなりし時代をになった大スターの一人ではないか。

 その映画界デビュー、いささか偶然ともいえる松竹のスカウトから開始されるとする。

 大スターで銀幕を圧倒しながらも、ふところ具合はかならずしも穏やかではなかったらしい。その要因は松竹など主力映画会社におさまらず、東方・日活・独立プロと、監督本位・作品主体に渡り歩いた軌跡のなせるワザ、か。

 自ら脚本も手がけたと言う、『親鸞 白い道』の紹介がある。床がぬけるほどの資料群、江の島かに宿を確保しての資料整理、10年かをかけた原作と脚本。
 かりたてものは、放念と親鸞に「(二人の教えは)何度目かの本来の仏教の覚醒」、「(語弊はあるかもしれませんが)民衆の立場に立った優れた思想」ではいかと思いいたることになる(143p)。

 三國は「釣りバカ」シリーズで、建設会社のオーナーを務める。マチ中で「スーさん」と役柄名で呼ばれながらも、「芝居」「仏教」「家族」を語り、「そういう風に生きていた男がいるんだと思って見つめてほしいし、僕をクッションにしてそれぞれの人生の考えてくれればいい」とする(158p)。

 「釣りばか日誌」の浜崎伝助のごとく、多くの人の個性が生かされる組織であると、よいのだが(『NHK知るを楽しむ 人生の生き方』 日本放送出版協会 2008年)
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梁石日談「”血”の咆哮」
 梁石日談「”血”の咆哮」。1936年生まれの著者が、1980年の44歳でタクシードライバーから詩集を刊行する。

 「父と在日」、「破滅と文学」の前二章で波乱にみちた生い立ちを語る。
 聞き手が厳父を称して「自己中心的にて怪物」といわしめた父の実像をまじかにみながら、入学した定時制高校の入学式で社会人学生たちによる「学生運動の拠点」に目を開かれる(34p).

 そこから議論好き高校生、金時鐘という詩人に出会い、資本論を読んで理論武装を重ねる(35-38p)。
 「(総連にしろ日本共産党にしろ)組織というのは個性を殺すことでなりたっている」(40p)。
 
 後二章の「狂騒と再生」「闇と渾沌」から、詩人・作家の転機を語りはじめている。
 「文化を育てようとしない経済「社会」というのは長く栄えたためしがない」(68p)。
 「冷戦後、社会主義や共産主義は幻想に終わり、資本主義が勝利したとも言われるが、確実に資本主義にほころびが現れてきている現在」(72p)。
 「日本人にはアジア蔑視の傾向がまだまだ強いんですよ。欧米にばかり目を向けて、アジアとちゃんと向き合ってこなかった」(78p)。
 「(冷戦後のアメリカが)超大国として肥大していくにつれ、外部にどんどん敵を作っていくが、じつは巨大化した自分の幻影におびえている」(82p)。
 「(資本主義が行き詰まった今)一人一人の主義が世界を動かしていくようになるのかも」「一人一人のアイデンティティが基本となる社会」「人間の本質的なアイデンティティがこれからは重要になってくるように思うんですよ」(86p)。

 日本社会を見つめ、弱い者にシワ寄せされる格差を体験しながら、アジアとの摩擦是正の道を提案しているように、思えるが。(『NHK知るを楽しむ 人生の生き方』 日本放送出版協会 2008年)
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布伏内 かくれんぼ
布伏内 かくれんぼ.「かくれんぼ」は雄別炭礦跡地にちかい、舌辛川べりの茶房。



 毎週金、土、日の営業。深い山なみに包まれ、たまに空に釧路空港を発着するジェット機が通過する。



 周囲の木立をぬってゆくと、舌辛川(したからがわ)の川べりにおりてゆくことのできる散歩道もある。



 河原の散策、森林浴、コーヒー&カレーがおすすめ。森の木立で本でも読んで、時を過ごす。



 これが、また良い。
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恵曇港
恵曇港は「えともこう」と読むと知った。島根県の漁港。お世話になった方から、「日本海 海の幸」の宅急便。

 カレイ、ハタハタ、アジetc.なかにチラシがあって、「山陰 恵曇港からの新鮮便」とある。
 「お召し上がり方」の解説書付きで「エチガレイ」には「コラーゲンを多く含み、お肌の健康にかかせない」。
 主婦の目に「これは」とうつるに違いない。

 保存方法も記載があった。要冷蔵で2-3日。長期保存はラップに包み、フリーザーにとある。
 書いてある通りにしておくと、帰宅後、「こんなことして」と言われないで済む。
 
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大相撲
さすがに昨日はみました。結びの一番。力がはいりましたねー。

 2分以上の力相撲。横綱の意地、大関の気魄。
 上位をねらう意欲が、壁をこじあけた感じ。

 男性のスポーツながら、観客には女将風のお方が和服姿で「砂かぶり」の席に。
 力相撲の大一番。秋が終わって、新横綱の活躍。

 周囲を歩いただけで、中に、はいったことのない両国国技館。
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山田啓二・松本紘・山折哲雄談「宮さま、京都にお還りやす」
山田啓二・松本紘・山折哲雄談「宮さま、京都にお還りやす」。『文藝春秋』2012年10月号掲載の座談会。

 明治天皇崩御100年といわれると、今年は確かにそうだ。注目しておきたい談話。
 山折「政治・経済の中心である東京と、芸術・文化の中心である京都」。
 松本「大学の原型はもっと昔の京都にあった。『大学寮址』(略)は九世紀後半だといいますから、一〇八八年創設のポローニャ大学よりも古い」
 山折「科学技術だけに頼って暴走させないための精神的な哲学、人生観というものが必要」(251p)

 即位の礼と大嘗祭。この二つが東京で営まれたことについて、「いつの間にか儀式の重要性を理解していないお役人が全部決めてしまっていた」との山折に、松本は「文化的な背景を議論することなく、そうなってしまった」と応じる(254p)。

 歴史の意味と形。儀式は形で、意味に「文化的な背景」がこめられていると、いうことか。
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農園収穫祭 かくれんぼ
 農園収穫祭 かくれんぼ。友人が布伏内(フブシナイ)の地で開く農園の収穫物を囲んで、楽しい会合。

 13年前に開いた農園。この数年、秋分の日の収穫祭にお邪魔している。



 会場は、茶房「かくれんぼ」。



 園主の紹介と感謝のことばにはじまり、かぼちゃ・馬鈴薯・トーモロコシの各種塩煮。
 豚汁に焼き肉(ジンギスカン)があって、ビールで乾杯。



 アトラクションは高校時代以来友人の方が今年も出演。

 荒城の月、月の砂漠、秋、黒田節、南国土佐をあとにして、など等。アンコールにこたえて「ああ、上野駅」。



 演奏者は解説で「われわれは『金の卵』世代、『ああ、上野駅』をむすびに」。
 中学校卒業後の同級生、「職業生活の明暗に、幸・不幸の運命があったなー」。術懐していた、が。
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橅(ぶな)  岩手山
 橅(ぶな)、木へんに「無」と書き、「値打ちのない木」と読むらしい。「水分が多いうえ、曲がりが多く、腐りやすくて建築用材にはならず、あるものはみんな伐った」。NHK「にっぽん百名山 岩手山」に出演の登山ガイド 山田孝男さんの解説。

 橅を皆伐(かいばつ)し、かわりに経済性の高い杉、ヒノキを植えたところで山には災害、とくに保水力が低下して洪水、地すべり被害が多くなった、とも。

 山岳登山でくたびれない方法も。それは「足首を伸縮させない歩き方」。斜めに横歩き。足首を伸縮させないように斜め上の方に歩をすすめ、方角をかえてさらに斜めうえをめざす。

 宮沢賢治は30回、この山を登った、と。20歳台で生涯を終えたこの人に30回は年に複数回は登山したことになる。
 リピートのうえに、山とむきあう姿勢。このことを、たいせつにしておきたいもの。

 
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時手紙 文学館
時手紙 文学館。NHK番組で眺めた「時手紙(ときてがみ)」。施設と言うか生涯学習機関がヒトと地域と地元・施設をつなぐ紐帯の事業としてはおもしろいと、思った。

 以下はホームページ情報。どうやら愛知県蒲郡市にある海辺の文学記念館が提唱しているもののようだ。
 趣旨は「蒲郡へ訪れた想い出、未来の自分へのメッセージを、未来の自分や家族、大切な友達に手紙を出せる「時手紙」。ご指定の年数が経過したら届く、未来にメッセージを伝えるタイムカプセルです。」と記載されている。

 投函するためには500円が必要。あとで、届けてくれるサービス。投函先は「海辺の文学記念館」と「市内各宿泊施設フロント」とある。

 施設をつくるも、利用者の広がりに事欠き、利用もほんの一瞬でリピートはなし。
 そこで、一考。そこを、なんとかということか。17日のNHKGTVであったと、思う。メモ風に記載をしておきたい
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石山緑地 120901
 石山緑地 120901  札幌市は南区。「石山」の地名があるが、そのシンボル的地域。



 石を切り出したあとが保存・整備されて、市民が利用できる。

 
 

 古代遺跡の演舞場をおもわせる構造。



 石材を切り出した跡の刻線がクッキリ。石の質は堆積岩系統かなー。



 夕方の訪問。ためにいつもは水のながれ、雫のしたたるこの塔も、このときは業務終了。水がとめられてしまった。
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白澤卓二・坪田一男対談「僕らが実践する『不老の食事』」
 白澤卓二・坪田一男対談「僕らが実践する『不老の食事』」。『文藝春秋』 2012年8月号の特集「長寿の人、短命の人」での対談。

 坪田一男氏の談(267p)。
 「最近のご遺体って腐敗しにくいらしい。これは厳密に調べたわけではありませんが、防腐剤入りの加工食品をたくさん食べていることが影響しているのではないか」

 「この前、冬のコートのポケットにおにぎりが入っていたんだけど、これが全然腐っていない。半年近くもくさらないほど保存料が入っているなんて、どれだけ健康に悪いか誰にでも想像ができますね。」

 前段に「加工食品には保存料の問題があります」と、坪田氏は切り出す。「僕はアイバンクの仕事をしているので、葬儀屋さんとお話をすることがあるんです」と続ける。「そこで聞いたんですが」と、話はつづく。坪田氏は申される。「これは厳密に調べたわけではありませんが」と述べつつ、「ちょっと恐い話をすると」、と。

 まったく同様の話。6月21日の昼食時に地元で製麺業を営む社長さんが切り出された。
 ほどなく配られた本誌に記載があった。

 ヒトは都合よく考える。手頃な外部サービスの加工食品。栄養は体に残るが、添加物は体外に排出されるハズ、と。
 そうは都合よくいかないらしい。それよりも、「とうとう」そこまで来た、か。その感がした。
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永井路子著『北条政子』
 永井路子著『北条政子』。韮山にあった平家の代官・山木兼隆からの恋文が21歳になった政子の身辺に届く。
 北条時政は頼朝の岳父でのちに執権を務めるが、発端は平家に近寄った側面。

 そこをのちの歴史の経過が示す源氏の背後で存在感を示すのは、貴公子・頼朝の女性に対する用言、手練手管であったか。
 いやそもそも、源平の戦いとはいうが、同じ武家の対立で同根の争いであったことの証左なのか。

 どなたかが買い求めた角川文庫本が書棚の中に。分厚い一冊、しばらく放置されていたが。
 これまで永井文学に接点はなかったが、はじめて手にして読みはじめ。

 作者の背景に歴史学者の一家が控えているそうで、その手法には確かな裏付けをもつとされている、が。 (角川文庫 1978年)。
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渡辺幸應ほか「大江戸クルメ物語」
 渡辺幸應ほか「大江戸クルメ物語」。江戸が人口吸収地区になって、生産と消費の間に距離感が発生するようになった。

 多分、「新鮮」のつぎに、なんらかの「手」、すなわち「食材を分解して、一手間かける」をくわえて、食べ物本来の味を豊富にすると言うか、多様にすると言うか。服部はその「手」をくわえるを、「仕事」と表現する(92p)。

 魚にコロモをまぶして、脂であげる。マグロを醤油につけて「ヅケ=漬け」の食べ方を提示する、そば粉でうどん風に仕立てた面を汁でたべる。したがって寿司、てんぷら、そばは江戸時代に完成した「三大ファストフード」(90p)と表明する。

鰹節。輸送に日時を要するが、その間に良質の黴(カビ)を発生させて、悪玉のカビを抑制することを考えたのだそうだ。「養生」というか、輸送期間=製品のグレードアップ期間と位置付けたわけだ(93p)。
 動物性のイノシン酸と植物性食品のグルタミン酸をくみあわせて「数倍うま味が増します」(94p)ともいう。昆布ロードの始まりでもあり、重要な発見。

 我が国の工業化で、食料の自給率はさがった。考えておきたい。自然の宝庫に未利用資源が、まだまだありそう。本書はそうしたことを教えてくれる。

 
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田中優子著「江戸の色恋ものがたり」
 田中優子著「江戸の色恋ものがたり」。著者はTBS系列の番組でコメンテーターを務め、日曜日の朝のワイドショーに和服で登場する。
 略歴に「近世文学を研究」、その後は「美術、生活文化、海外貿易、経済、音曲、『連』の働きなどに拡がってゆく」と、紹介されている。
 関心はさらに、「中国文学を中心に東アジアと江戸の交流、比較研究などにおよんでいる」ということなのだ。
 研究者として東京で育ったのだろうが、研究姿勢としては京都型をおもわせて、一時代を多様な側面から位置づける点が注目されるところ。

 本書は「NHK知るを楽しむ」のテキストだが、案内人で落語家の柳家花緑は「恋も食も人生そのもの」と、冒頭に書いている。後編に「大江戸グルメ考」の、物語りがあるからだ。
 田中氏は書く「心髄は好色にあり」「あの人を射止める戦略」「浮気な結婚、まじめな結婚」「遊郭なればこそ」の4話。
 基底には、「江戸の文化の多様性と深さ」(8p)、「(江戸時代は)『色』と『恋』も別のものと考えていました」(9p)が、あるらしい。

 「『色』と『恋』も別」の世界には、男女のむすびつきが≪世継ぎ獲得≫であったり、≪家業繁栄の労働力≫であったりしたこと、か。
 但し、そう記載すると、「それは男性の立場」ということになるのかも。

 江戸時代は、戦国時代の世からの安定期。力をひろげ、力を維持することが前提の時代の男性と女性。
 理想と現実を埋めつつも、両方がならびたつ仕組み。それを多様性と言うのかどうかは、難しいところであるが。(日本放送出版協会 2008年)。
 
 
 
 
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釧路川河口

釧路川河口.屈斜路湖から発した釧路川は、太平洋にそそぐ。河口に港、その背後に幣舞橋、両サイドにマチ並み。



 川には漁業権、岸には漁家、背後に鉄道。家並みは木造から鉄筋・鉄骨。



 砂利道は舗装されて、さらには拡幅。人・リヤカー・馬車が転じて、トラック・バス。このごろはトラックも少なくなった。歩く人にかわって、乗用車。



ビルはふえたが、都心にあつまる人は少なくなった。都市銀行や県外の地方銀行の支店が乏しく、ビルに同居する医療機関が少ない。証券・生命保険など金融がなかなかみあたらず、百貨店が撤退。
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