拉致・・・
【主張】被害者帰国5年 首相は拉致解決策を示せ
2007.10.14 03:32

このニュースのトピックス:北朝鮮拉致問題
 拉致被害者の蓮池薫さんら5人が帰国してから、あす15日で5年になる。その間、5人の家族8人が帰国した以外、拉致問題はほとんど進展していない。「解決済み」と言い続ける北朝鮮の不誠実な対応に、改めて憤りを覚える。

 福田康夫首相は先の自民党総裁選で「拉致問題を私の手で解決したい」と述べた。だが、秋の臨時国会が始まっても、福田内閣がどんな方法で拉致問題を解決しようとしているのか、よく伝わってこない。

 今月10日の衆院予算委員会で、福田首相は「拉致問題が解決しなくては困るが、核、ミサイル問題も解決しなくては困る。包括的解決に向けて努力するのが基本的な考え方だ」と述べるにとどまった。国民はもっと具体的な答弁を期待していたはずだ。

 帰国していない横田めぐみさんの両親ら拉致被害者家族会のメンバーは5日、首相官邸を訪れたが、福田首相との面談は実現せず、町村信孝官房長官(拉致問題担当相)が応対した。

 金正日総書記が拉致の事実を認めて謝罪した平成14年9月17日の日朝首脳会談で、福田氏は小泉内閣の官房長官として、「拉致被害者5人生存、8人死亡」とする北の報告を家族に伝える役割を担った。北の一方的な情報に疑問をさしはさまなかったこともあり、福田首相に対する家族らの信頼は必ずしも厚いとはいえない。

 被害者家族の信頼を取り戻すためにも、福田首相は機会をつくって家族会と会うべきである。

 福田内閣は、北朝鮮が拉致被害者の再調査などに応じた場合、北朝鮮の水害被害に対する人道支援を行う方向で検討に入ったといわれる。だが、再調査の表明だけで、拉致問題の進展といえるのかは疑問だ。これまでも、北は再調査を約束しながら、それを誠実に実行してこなかった。

 拉致問題の解決とは、拉致被害者全員が帰国し、すべての拉致実行犯が引き渡されることに加え、死亡した場合は死因や墓の状況など納得のいく説明が得られることである。それらの一部でも実行されない限り、拉致問題の進展とはいえないのではないか。

 人道支援そのものに反対する理由はないが、「再調査」の口約束だけを条件とする安易な支援は避けたい。