2008年02月の記事


”北方領土の日”
【主張】北方領土の日 「洞爺湖」で議題に加えよ
2008.2.6 03:23

このニュースのトピックス:主張
 ■露の新政権に国際的圧力を

 あす7日は「北方領土の日」である。折しもロシアでは新しい大統領を選出する選挙戦が始まり、プーチン大統領の後継者が選ばれる。7月には、日本で主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)が開かれ、現職のロシア首脳(旧ソ連を含む)が初めて北方四島の属する北海道に足を踏み入れる。

 だが、日本政府の最近の領土に関する交渉姿勢には少なからぬ疑問を呈したい。政府筋によると、G8首脳が一堂に会する全体会議では領土問題を取り上げず、文書などに盛り込む考えもないという。個別の日露2国間の会談で話し合うというだけでは、ことなかれ主義とのそしりを免れない。外交には、謙譲の美徳はありえない。

 「北方四島の一括返還」という基本姿勢も揺らいでいる。ロシア側に誤ったシグナルを送り続けてきた、と言わざるを得ない。北海道でのサミットを領土問題解決に道を開く千載一遇のチャンスにしなくてはならない。

 大統領選はプーチン大統領が指名したドミトリー・メドベージェフ第1副首相の勝利が動かない。新政権はプーチン体制の継続とみることができる。一方、2001年に米国で9・11テロがあり、国際社会はテロとの戦いに追われた。日本国内では日露交渉に携わった政治家や外務省職員を巻き込むトラブルがあり、こうした内外の事情が交渉自体を冷え込ませたことは否めない。だが問題は、いつの間にか交渉の焦点が曖昧(あいまい)になったことだ。

 ≪腰定まらぬ日本外交≫

 日本ではいわゆる「2島返還論」に加え、4島面積の「折半」で妥協を図ろうとする奇策まで出てきた。国内政治の混迷、足腰の定まらない外交方針のためであり、ロシア側はその足元を揺さぶっている。その中で返還運動を進める関係者らは、閣僚や政治家の無定見な発言に振り回され、戸惑いや不信感すら広がっている。

 そもそも、スターリンによって不法占拠され、主権が侵害された状態にある領土の返還を迫るに際し、妥協によって合意を取り付けようとすること自体がおかしい。ソ連崩壊後の対露交渉では、経済支援と領土交渉をからめる戦術が模索された。そこで得られた教訓は、経済協力や経済関係の強化が領土問題の解決を導き出すことはない、という厳然たる事実である。

 考えるべきは、北方領土問題の所在をもう一度、国際的に認知してもらうことであり、洞爺湖サミットはそのまたとない機会となる。政府は地球温暖化など環境問題をサミットの重要テーマとしている。ここに北方領土問題を加えるべきだ。63年にわたり不当な居座りを続けるロシアの非を明らかにし、G8メンバーの2国間で、いまだに戦後処理が済んでいないことを知らせることである。

 ≪全国大会に首相出席を≫

 北方領土問題は1990~92年のサミットで毎年、議長声明や政治宣言に「法と正義の原則に基づき外交政策を展開するとのロシアの公約を歓迎する。(それが)領土問題の解決を通じた日露間の正常化の基礎となる」といった文言が盛り込まれた。

 さらに2005年には、欧州議会がロシアに北方領土の日本への返還を求める決議を採択している。サミットという国際舞台をいかに利用するか、日本の外交力が問われている。北海道という絶好の場で問題提起しなければ、ロシア側による既成事実化が固定してしまう。

 欧米諸国には、民主化の後退が目立つロシアをG8に加えたのは間違いだ、という声がある。サミット会場に近い島々が、いまだ占拠状態にあることを話題にするだけでも、ロシアとしては「うしろめたい」気分にならざるを得ないだろう。

 また、こうした場で領土問題を堂々と主張することは、ロシアの新政権はもちろん、竹島や尖閣諸島など他の領土で不当な主張を展開する韓国や中国への強いメッセージにもなる。

 7日には東京の九段会館で27回目の「北方領土返還要求全国大会」が開かれる。この数年、現職首相の欠席が目立つ大会に福田康夫首相が万難を排して出席し、政府の方針とサミットに向けた意気込みを国内外に発信してもらいたい。それが領土問題で国民の再結束を図る第一歩だ。
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