日本香堂の企業戦略
アメリカのインセンスメーカーで有名どころつったら、やっぱジェニコ社でありましょう。
GENIECO、すなわちガーネッシュのメーカーですね。
1925年(大正時代)に設立された老舗です。
けど、98年に日本香堂の傘下、100%子会社になったそうな。

http://www.sekkenshinpo.com/america/america2.htm

さらに、フランスのオシャレブランドのESTEBANも96年に日本香堂の傘下になっている。
http://www.esteban.co.jp/company/

これらはあまり知られてないように思う。ガーネッシュもエステバンも日本香堂自身も、これらの資本関係をほとんど表に出さないでいる。

恐らく、別ブランドとして独立性を際立たせたほうが、これらオシャレさん需要的には有利だからだろう。
日本香堂つーと毎日香で有名な日本で今トップシェアのメーカーだが、同時にそれゆえに大衆メーカーの代名詞的な印象もあり、セレクトモノ的な感覚とは遠い印象になってしまう。
日本香堂ブランドのルームフレグランス用途のインセンスもいろいろあるけど、他社に比べいまいち評価されてない雰囲気あるのは、恐らくそのあたりに原因があると思うし…
パナソニックとナショナルじゃないけど、日本香堂のオシャレインセンスブランドは別名で独立させたら評価変わってくるんじゃないかな、と思ったりします。
オシャレ気取りの人ってアホだからブランド名でバイアスかかる人多いんで。
エステバンのお香とか、ガーネッシュのお香、全く同じ香りで日本香堂ブランドで売ってみたらどうだろう?恐らく評価下がってたいしたものではないかのように受け取ってしまう、ブランド信仰な人はきっと居ると思う。


さらに店で見かける香十、鬼頭天薫堂、大香といったブランドも日本香堂グループだそうだ。
物凄いインセンス界の巨人になってきている。

2005年には韓国のお香のトップメーカーらしい万福堂と合弁会社を作っている。
これが萬福香堂(http://www.manbokdang.com/)という会社で、「萬福堂の営業権、ブランドを譲り受け、アジア市場を中心に販売を行う」とのこと。
断片的説明を読む限りだが、ブランドが新会社に移るってことは、これは基本的に万福堂は日本香堂資本の入った新会社、萬福香堂に組織換えが行われ、ESTEBANと同じような立場になったという認識でいいのではないだろうか?


すごい拡大方針だ。

日本香堂の歴史は調べると凄く面白いです。日本香堂のサイトに書いてないような情報もWeb検索で調べると出てくる。
公式の沿革では「1942年 株式会社設立」といきなり始まって「1966年 社名を株式会社日本香堂に変更」となっていて、あえて元の社名を伏してあるが、(株)東京孔官堂であったらしい。
大阪の老舗線香メーカーの孔官堂(煙の少ないお線香で有名。1883年創業)のグループ企業であったのだ。
なんでも日本香堂と言えば毎日香だけど、毎日香のヒットで潤いすぎて、本社と亀裂が入って分家したとのこと。
また、この毎日香も、そもそもこれは鎌倉の鬼頭天薫堂(http://www.tenkundo.co.jp/)が明治期に作った線香で、ヒットしたもののようですが、これのブランドを買い取ったものだそうです。
今では鬼頭天薫堂自体も日本香堂グループの1企業です。

法人としての歩みは(株)東京孔官堂設立の1942年だが、もともとは天正期にできた御香屋だそうです。
その後1929年に孔官堂の東京出張所になり…1942年に東京法人になったという流れということです。
そして65年に毎日香のヒットで孔官堂から独立、それまで扱ってた孔官堂のブランドも返還とのこと。
その後オリジナル商品として開発したのが「青雲」だそうです。

65年、66年あたり両社でドロドロしてそうだなあ…

しかし、そもそも孔官堂の下部組織でしかなかった小さいお香屋が、今や孔官堂なんて目じゃないくらいの巨大コングロマリットになったというのは興味深い。
ある意味強欲の成せる技だ。強欲というと聞こえが悪いが、お香メーカーは単に好きな人にいいものを、みたいな趣味臭いテイストの経営をやってる老舗が多そうですが、日本香堂は商売人なんでしょう。ビジネスマンなのだと思う。企業として正しいと思う。
毎日香にはじまるブランド買収の歴史見ても分かるように、売れるものを作る、買うという分かりやすい方針なのだろう。
またそこでGONESHやESTEBANに目をつけるあたりのセンスの良さもあって、現在の隆盛に繋がったのでしょう。
通常の日本の線香屋の感覚では、普通GONESH買収しようって発想出ないよね…。そのあたりの頭の柔らかさは凄いなあと感服するばかりです。