残された時間・・・
【主張】家族会代表交代 拉致解決へ時間は少ない
2007.11.27 03:40

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 拉致被害者家族会の代表が10年ぶりに、横田めぐみさんの父、滋さんから、田口八重子さんの兄、飯塚繁雄さんにバトンタッチされた。滋さんが2年前から体調を崩し、無理ができないためだ。

 滋さんは妻、早紀江さんとともに、家族会の先頭に立って全国や世界中を駆けずり回り、拉致問題の解決を訴えてきた。その必死の姿が人々の心を打ち、政府をも動かした。代表を退いた後も、体を大事にしながら、夫婦で運動を支え続けてほしい。

 新代表の飯塚さんは「私たちには、もう時間がないとの思いで突き進み、1、2年で被害者全員が帰ってくるようにしたい」と決意を語った。高齢化が進む家族会を思い、一日も早く肉親に会いたい、会わせたい、との願いが込められている。

 この10年間に、蓮池薫さんら5人とその家族が帰国した以外、拉致問題はほとんど進展していない。代表を退任した滋さんは75歳、妻の早紀江さんは71歳、北に拉致されためぐみさんは43歳になる。新代表の飯塚さんも69歳で、妹の田口八重子さんは52歳だ。

 家族会には、肉親の帰国を待たずに亡くなった人もいる。増元るみ子さんの父、正一さんは5年前、「おれは日本を信じる。お前も日本を信じろ」と息子でるみ子さんの弟の増元照明さん(現・家族会事務局長)に言い残し、79歳で死去した。政府は、時間があまり残されていないことを念頭に、拉致問題解決を急ぐべきだ。

 飯塚さん、照明さんら家族会の一行は今月中旬、訪米し、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除をしないよう米政府に働きかけた。だが、その後に行われた日米首脳会談で、福田康夫首相は、拉致問題の進展がないままの指定解除に反対だという日本政府の立場をブッシュ大統領にはっきり伝えなかったといわれる。

 国連総会第3委員会で、拉致問題の早期解決を求める対北人権非難決議案が3年連続で採択された。昨年、賛成票を投じた韓国が棄権に回ったことは残念だが、賛成票は97票と昨年より6票増え、拉致問題への国際理解は着実に広がっている。

 福田内閣はもっと家族会の声に耳を傾け、北に対して圧力となる強いメッセージを発すべきだ。