想いが・・・
【外信コラム】赤の広場で はだしのゲン
2007.11.8 03:36

このニュースのトピックス:マンガ
 原爆の恐ろしさを描いた漫画「はだしのゲン」(中沢啓治原作)のミュージカル初公演が先日、モスクワで行われた。1999年夏に広島で初公演した後、国内各地や米国など世界各国を巡回公演、ちょうど400回目の記念公演がモスクワだった。東京の劇団、木山事務所では「核大国ロシアでの公演は目標のひとつだった」としている。

 日本人俳優たちが日本語で演じた舞台からは通訳を通して、反核の強烈なメッセージは伝わったようだ。劇の最後、目に涙を浮かべ、立ち上がって拍手を送っていたロシア人観客たちもいた。

 「日本人たちは自国の悲劇の歴史を我慢するだけでなく、それを記憶にとどめ、大衆漫画やミュージカルなどあらゆる方法で若い世代に伝える努力をしている。それはわれわれも取り入れるべきではないか」。ロシアの有力日刊紙、コメルサントは文化面トップニュースでこう伝えた。半面、被爆の惨劇という重いテーマだったがゆえに、日本に関心を持ちながら観劇を敬遠したロシア人も少なくなかったようだ。

 「もっとセリフを削ぎミュージカルとしての完成度を高くしたい。そうしないと、見に来てもらえませんから」。8年前の初公演からこれまでに舞台装置や演出などを見直し、芸術性を高めてきた劇団の木山潔代表の挑戦はまだ続く。誰もやらないことを一生懸命やる意義は必ずあると思う。(内藤泰朗)