KIKI×木村顕対談
最後のところの抜粋です。
日本では個人が自分のリズムを作っていかないといけないですよね。

木村:そうそう。昭和初期は、井戸端会議があって、お母さんが朝食の準備をしながらご近所さんと会話したり、お父さんが帰りに赤提灯で呑んで帰ったり……。今も一部は残っているけれど、昔は日本特有のリズムがあったと思うんですよ。そういうのが90%くらいあって、残り10%くらい自分の世界があればいい。全部自分でリズムを作っていくと疲れるし、多くの人はリズムを作るだけでたくさんの時間を費やしちゃう。

KIKI:これからのライフスタイルを考えるときの1つの実践として、消えかかった風景をもう1回再現してみるというのもありえますよね。

木村:ライフスタイルが変わっても、日本人のアイデンティティーはある。家に帰ったら靴を脱ぎたくなったりするのは日本人ならではですよね(笑)。取り戻すものは取り戻して、変えたほうがいいことは変えて。そうやってリズムを作り直せればいいなって思います。

KIKI:きっと自分たちには自分たちらしいかたちがあって、それは土地や環境とも関係が深いと思うんですよ。5年前に東京から湘南のほうに越したんですけど、時間の流れ方もゆっくりしているし、たまたま自分の住み始めた家も、小さいながらに庭があって、最初から植えてあった庭木が、いわゆる和木なんです。自分でゼロから庭を作ろうと思ったら、こういう木を植えようとは思わなかったけど、すごくいいんですよね。12月に山茶花(さざんか)、春になれば椿や梅、サツキが順番に咲いて。梅雨には紫陽花、秋には金木犀……。

―いいですねえ。

KIKI:「老後の生活みたい」ってたまに言われちゃいますけどね(笑)。でも山に登って、自然をより身近に感じるようになったから、今の生活はすごくしっくりきています。今まで見てきたもの、試してきたことを経て、自分に合った環境で無理しないで過ごすこと。それが私にとってはより良い生活なのかなと思います。

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自然や風土と溶け合う中で、自分の独自性のリズムを1割は持つというスタイル 息のしやすい 快適なライフスタイルになるのでしょうか?