B級人生
うむ…とあるカキコをしていたら無性に昔の事が思い出されて来た。なんだろう…あの時の情熱を留めて置きたいのだろうか。
取り敢えずココに描いて見よう…

まだ映画館が辛うじて夢を繋いでた頃。ホームビデオはβが全盛で、10家庭に1台ぐらいの普及率だった。
今ほど情報は速くなく、海外で話題になった映画を観たいと思っても配給会社の胸三寸で物事は進められていた。
たとえビデオ商品になったとしても2万円以上した上に、その頃には手垢の付いた魅力の乏しい商品でしかなかった。

そんな時、B級映画ファンの私に情熱を与えてくれたのが新宿の「裏ビデヲ屋」だった。
それは実に怪しげなワンルームマンションの一室で営業されていた。
狭い部屋の壁の一方にはビデオデッキがズラッと並んでいて、カウンターで仕切った部屋の手前、入り口に近い方にレンタルショップの様にビデオテープが並べられている。
が、並べられているテープは家庭用の普通のテープで、テプラかワープロで打たれた手製のラベルが中の作品を示している。
実際、これらのテープは本当の商品では無い。扱ってる作品を確認する為の見本でしかない。
この「裏ビデヲ屋」に通って来る客は自前の生テープを持ち込んで、扱ってる映画作品のダビングを申し込むのだ…

当時、レンタルビデオも一本1500円ぐらいで貸し出されていた時代、テープ持込で一本3000円程でまだ誰も観ていないような映画が観れる。と云う期待は店のアンダーグラウンドさも手伝って、まるで薬の様に私を魅了したのです。
そうして私はダビング商品を受け取るタイミングに合して三日毎に新宿のお店に通ったのでした。

海外のみで発売されたビデオやレーザーディスクをダビングしたものに、お手製の日本語テロップを入れたそれらのテープは稚拙ではあったものの、吹きつけて来る情熱は商売以上のモノを私に感じさせてくれました。
しかし時代は進みます。彼等の情熱が時代に棄てられて往くのは仕方のない事だったのでしょう。
情報に追いつけなくなった「裏ビデヲ屋」は、映画館に直接ビデオカメラを持ち込んで映画を撮影しソレを商品に出す様に成りました。
そこには何の希望も無く損得勘定だけが横たわり、やがて映像業界の圧力に淘汰されて逝くのでした…

その後も私のB級人生は続くのですが、このお店があったのはもう十年以上前の話。
新宿に通っていた時のウキウキ感がフト思い出される私でした……