「源氏物語」
母は、直腸ガンで82歳で死んだ。

その2,3年前、帰郷した折に、もう病魔にとりつかれていたが、病気を感じさせないくらい元気で、
「『源氏物語』を全部読み終えた」というので、
「ほう、それはすごい」というと、母は、ニコニコ嬉しそうだった。

尋常小学しか出ていないのだから、まさか、原書で読んだわけではないだろうが、誰の訳で読んだのかは、訊いたのかもしれないが、思い出せない。

ネットでニュースを読んでいて、ふと目に留まった1行のリンク――――
それは、一主婦が、家事と親の介護の合間に、「源氏物語」の原書に向かい合い、18年かけて口語に移し変えたというのだ。

全五十四帖、原稿用紙にして四千枚。
その人(上野榮子さん)は、私家版として本にして、友人に配った。それを手にする機会があった専門家が一読して、感嘆した。
数多ある作家の翻訳にはない、思い入れを一切排して原作の世界を再現した素晴らしさ……

そのことが「日本経済新聞」の文化欄に紹介されて、総ページ数二千七百ページ、全八巻として、日本経済新聞社から出版された、というのだ。

私も、是非、読んでみたいが、28,000円、分売不可が、ちょっと……

半年位先に、まだ残っているようだったら買うつもりだが、どうだろう。

母がいたら、なんというだろう。
――――そんなことを考えてしまった。

「源氏物語」に関しては、「Links」にあります。

編集 十六夜  : お邪魔いたします。この記事わたしも眼にして、ぜひ読みたいと思いました。 それにしても、お母様すごいですね。読書家だったのでしょうね。