夕暮れの蝶
暮れなずむ残照の中
蜜柑の木の枝をぬって
蝶が舞っている

ひら ひら… ひら ひら

儚げな羽の色

いつだったかの夕暮れ
鎮守の森の鳥居の前で
出立するぼくを見送ってくれた母の姿が
木木の間に見え隠れしていた

蝶と母の姿が
そこにある長大な時間を超えて
重なって見えた

ひら ひら… ひら ひら

儚げな羽の色