淡い初恋
「そんなこと言うんやったら、ええわあーっ!!」

どこかで女性の大きな声がして

夢の途中で、目がさめた。


お抱え運転手が運転する乗用車の後部席。

私の左横には、初恋の女性が座っている。

いままで一度も触れたことがない(小学校のときのフォークダンスは別にして)彼女の
手を握った。

しばらくその状態でいさせてくれた彼女の口が開く。

「お子様は?」

「いま○○才です。」と、私。

私の手をそっとふりほどき

「私の父は、厳しいのよ。」と彼女。


とある地方都市の議員であった彼女の父のお抱え運転手が聞き耳を立てているように感じた。


「好きだ!」と一言も言えなかった私。

私に恋されていたとは知らずに彼女は

どこか私の知らない土地で、しあわせに暮らしているのだろうな。

そうであってほしい。