2006年1月
2006年01月31日

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減額家賃で供託 
家賃の減額請求をしても勝手に
        主張する金額で支払うのは危険である


 (問)家賃15万円の賃貸マンションを借りている。最近、隣の入居者が月13万円の家賃で借りていることを知った。同じ間取りあるにも拘らず、2万円も安い家賃というのは納得が出来ない。月末に13万円の家賃を持参し、家主に家賃の値下げを交渉したが、家賃は受領して貰えなかった。家主に家賃の受領を拒否された時は供託をしないと家賃の不払で契約を解除されると聞いたが、どうしたらいいのか。

 (答)民法494条「供託」は「債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済することができる者は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる」と規定している。借家人は賃料額を法務局に供託して措けば債務を履行した(家賃を支払った)ことになる。

 家賃の値下げに関して、借地借家法32条は「建物の借賃の減額については当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる」と規定している。即ち、借家人から家賃の値下げを請求された場合、裁判で適正な家賃が確定するまでの係争期間中の家賃は、家主自身が相当と認める額を借家人に請求することが出来る。

 それでは家主が「相当と認める額」に関しては、東京地裁1998年5月29日判決で「裁判が確定までの間は賃借人には『賃貸人が相当と認める額』の賃料支払義務がある」として、その賃料は「特段の事情のない限り、従前の賃料と同額であると推定することが相当である」としている。 

 借家人が家賃の値下げ請求をしても、借家人は家主が「相当と認める額」(家賃15万円)を暫定的にせよ係争期間中は支払わなければならない。家主の請求する額を下回り、自己の主張する家賃額(13万円)の供託を継続した場合、債務不履行を理由に契約を解除され、建物明渡を要求される恐れがある。

 従って相談者は納得がいかないだろうが従前の家賃額を支払い、借地借家法32条3項に基づいて、家主に配達証明付き内容証明郵便で家賃の減額請求を行う。その後、簡易裁判所に民事調停を申し立てて正当な家賃を決定して貰う方法を考慮すべきである。

  
(借賃増減請求権)
第32条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

3 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年1割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。


台東借地借家人組合 
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 2006年01月30日

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家賃3万円の値下げ
 店舗の更新料と手数料がゼロに



 東上野で居酒屋を営業している望月さんが組合へ電話をかけてきたのは、11月末のことであった。契約の更新を不動産屋が言ってきた。だが、家賃を5千円値上げするという内容。この不況下に値上げは呑めない。不動産屋は、契約更新の条件として家賃は15万5千円に、更新料は家賃の2ヶ月分、更新手数料は家賃の1ヶ月分、それぞれに消費税、契約期間は3年を提示している。

組合としては不動産屋を除外して、家主に直接交渉して家賃減額を実現するのが近道とアドバイスした。
家主との交渉時、望月さんは、法定更新制度の説明をし、既に契約は更新されているので更新料の支払いの意思がないことを言い切った。更に、固定資産税・都市計画税も上昇していない。寧ろ、毎年下がっているのが現状だ。坪1万円の家賃は高すぎる。組合で調べてもらったら近隣店舗の相場は坪8千円ということだ。

それに今回から家賃に消費税をかけているが、家主は非課税業者の筈だ。もし課税業者なら『消費税課税事業者届出書』を提示してもらいたい。それでなければ、家賃の便乗値上げなので消費税分は支払わないと付け加えた。

 交渉の結果、更新料・更新手数料『0』、家賃は3万円減額、消費税も無しでOKになった。契約書がないと店舗改装資金の借入が困難なので、契約書は必要だった。そこで、家主には、法定更新しているのだから契約書は不要だが、そちらも不安でしょうからと契約書を作らせた。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月29日
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敷金を返せ 
償却特約も無いのに勝手に
          敷金から2ヵ月分を差引


 今年の4月に10年間住んでいた台東区竜泉のマンションを引越した。差入れていた40万円(家賃の5ヵ月分)の敷金の返還を家主に請求した。 

 後日、敷金清算書が郵送されて来た。そこには、原状回復工事費として15万3千円。工事明細は�@カーペット張替�Aクロス張替�Bルームクリーニング�Cシャワーカーテン交換�D床凹み補修等である。それに加えて、契約書には償却特約など書かれていないにも拘らず勝手に家賃の2ヵ月分(16万円)を償却している。その結果、敷金から工事代金と償却分が差引かれ、残金8万7千円と書かれていた。

確かに原状回復条項はある。しかし、多くの判例は「建物賃貸借契約に原状回復条項があるからといって、賃借人は建物賃貸開始当時の状態に回復すべき義務はない」と結論を下している。原状回復は故意・過失・通常ではない使用による損害に対するもので通常使用による損耗や経年変化による自然損耗は原状回復の対象にならない。

原状回復工事としているものは総て耐用年数を超えた減価償却されたものばかりである。例えば財務省の原価償却資産の耐用年数の省令によるとカーペットやクロスの償却年数は6年である。このような資産証価の無くなったものを新品に交換してその代金を請求するのは暴利行為だ。
 そもそも、これらのものは家賃で回収すべきものであり、賃料の二重取りであり、支払う理由のないものだ。敷金40万円は何が何でも取戻すぞ。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月29日

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不動産屋の執拗な立退き要求
法定更新しているにも拘らず
          不当建物明渡請求をされる


 木田さんは台東区橋場で二階建一軒家(約20坪)を月9万円で借家している。家主は建物が老朽化していて強い地震があると倒壊の危険があるので契約が終了する5月31日以降に建物を明渡すよう不動産屋を通じて伝えて来た。家主は明渡しに関して立退料として30万円、敷金(3月分)は全額返金すると説明した。

 6月になると不動産屋から連日明渡要求の執拗な電話攻勢を受けた。対抗上、留守電にして電話には出なかった。すると今度は自宅へ引切り無しに押掛けて来るようになった。契約が終っているのに何故退去しないのだ。威圧的に明渡要求を繰返されて精神的に追込まれ、ストレスから病院通いもした。そんな折、友人から借地借家人組合を紹介され相談した。

 組合は木田さんに法定更新制度の説明をした。契約は法律上自動的に更新され、法律の定めに拠って前契約と同一の条件で継続される。従って契約は終了していない。家主が契約する意思がないと反証を挙げて更新を拒否しても法的に更新を覆すことは出来ない。

 後日、組合は明渡要求を繰返す不動産屋に対して�@木田さんは引越す意思がないこと�A契約は借地借家法26条の規定により既に法定更新されていると通告した。今後、家主の側に一方的に偏した代理として違法な明渡請求を繰返す場合は、宅地建物取引業法31条「業務処理の原則」違反で東京都住宅局民間住宅部指導課へ通報すると警告した。

その後、不動産屋の連日の明渡要求は嘘のようにぴたりと止んでしまった。家主も立退きのことを何も言って来ない。既に半年が経つが何の変化も起きていない。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月28日

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トラブル解決・家賃の値下げ
 
台東借地借家人組合に加入したばかりの組合員の島村さんから、家主との話合いに立ち会って欲しいとの要請があった。2年契約の期間満了が近づいている。家主は、更新料の支払いを約束していないにも拘らず10万円の更新料を請求してきたのだ。家主との間にはトラブルが他にもある。

 島村さんは、2年前家賃10万円で風呂付一戸建て住宅に入居した。入居時からガス給湯器とガス釜が故障していて、使用出来ない状態であった。修理を依頼すると、「修理出来る程の家賃を貰っていない」と逃げの一手。結局、風呂は2年間使えない状態で、銭湯に行かざるをえなっかた。ガス給湯器は仕方なく新品に付替えた。

 もうひとつ、島村さんには腑に落ちない事があった。水道メーターは家主と共用で、風呂を使っていなに拘らず料金が高過ぎるのだ。そこで水道局に過去3年間に遡り料金の開示請求をした。すると島村さんが入居する前の家主の水道料金は基本料だけ支払う状態であったことが解り、家主は、島村さんに水道料金の殆ど(今年に入ってからは、全額)を払わせていたことが判明した。

 こんな悪徳家主の所には居たくはないが、何もせずにこのまま引越してしまうのでは口惜しすぎる。そこで組合に相談ししてみた。組合役員が話合いに立合うことにした。

 組合が立会い家主と話合をしたその結果、1か月大人2人分の銭湯代2万円を考慮して家賃は今後8万円とする。更新料10万円は無し。水道代は、島村さんが入居する前の金額を勘案して、不当と思われる差額分を2年間遡って返金する。給湯器の交換代金4万円は家主が負担する。以上の如く決着した。

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2006年01月27日

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今時、大幅値上げ
 e内容証明郵便を受け取った


今年4月、台東区浅草の井田さんは、家主の代理人の弁護士によるe内容証明郵便を受け取った。「賃料は、1月当り金7万円を毎月末限り翌月分を支払うとのお約束となっております。…その間土地建物に対する租税その他の公課は増額され、土地建物の価格は上昇し、又近傍類似の賃料に比較すると、上記賃料は不相当であります。よって、上記賃料を本書面到達の日の翌日より1月当り金12万円に増額させていただきます。」という驚くべき内容であった。 

 こんな大幅で理不尽な家賃の値上げは認められないので、5月分の家賃は、現行の7万円で支払った。勿論家賃の受け取りは拒否され、法務局へ供託した。

その後、弁護士から家賃値上げの調停手続がとられた。6月に第1回の調停があり、値上げの根拠を具体的に示すよう弁護士に要請したが、それには何も応えない。弱点を衝かれたのか、逆上した弁護士は「こんな調停、やってられるか、止めだ、止めだ。」と叫んで退席してしまった。結局、調停は1回で不調に終わってしまった。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月25日

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建築業者が手抜き 
 建築後5年で床が鳴るようになり業者に遣り直しをさせる


 台東区下谷の木村さんは、5年前に地主と擦った揉んだの末、借地上の自宅を建替えた。最近、部屋・廊下など所々で床が鳴るようになった。

 そこで、請負の建築業者(大手家電メーカー傘下のPホーム)に、調べさせた結果、床の合板と根太を留めている釘が緩んでの摩擦音だと判明。根太と床板の浮きを木ネジで締め付ければ床鳴りは解決するという。

 手抜きをせずに、初めから床の合板を木ネジで確実に固定すれば問題は起きない。だが最近時間短縮のため、空気圧縮式の釘打器を使う業者が多い。その釘は、従来のものと違い寸胴で釘の頭の部分が無いので緩み易い。

 民法の634条は、請負人の完成した仕事が不完全であった場合の責任の規定で、仕事の目的物に瑕疵(欠陥)があるときは、注文者は請負人に対し、相当の期間を定めて、その欠陥の修補を請求することが出来ると定めている。更に、同条2項で注文者は、欠陥の修補に代え、またはその修補と共に、損害賠償の請求をすることが出来るとなっている。民法638条の規定から堅固建物の場合は引渡しから10年間、木造等の非堅固建物の場合は5年間無料で業者に修理させることが出来る。だから、建築業者Pホームは、今回の補修工事も当然無料で行う義務がある。

 業者はクロスを全部剥がし、更に床の合板も剥がしてその下の根太の浮きまで点検した。床板の取り付を総てネジ留めに遣り直し、勿論無料でクロスも新規に全部張替えた。


 民法
 第634条 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。

 2 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第533条の規定を準用する。

 第638条 建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後5年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、10年とする。

東京借地借家人新聞より


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205年01月24日

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敷金返還請求
 特約事項を盾に18万円償却
            原状回復費用25万円を要求


 台東区谷中の大塚さんは、今年4月に三筋のマンションから引越した。
 三筋のマンションは家賃が1ヶ月9万円で、敷金36万円を差入れていた。契約期間は平成15年8月1日から2年間。

「敷金は中途解約による明渡の場合は2か月分を償却するものとする。」という特約事項が書かれていた。契約書第15条には、契約が終了したときは、「賃借人は賃貸借物件を原状に回復し、賃貸人より賃貸借物件の検査を受けたうえ、賃貸者に明渡すものとします。」と書かれている。

 家主はこれを根拠にして、25万円を原状回復費用として請求してきた。家賃の4ヶ月分の敷金を返金しないで、更に原状回復費用の不足分7万円を追加払いしろというのである。

 敷金の2ヶ月分の償却は、問題があるが、取敢えず、家主に残りの敷金の返還請求を以下のような文面で行なった。
 「賃借人は建物を既に明渡しておりますが、預けてあった敷金18万円をまだ返還して頂いておりません。本年5月20日までに当方の口座にお振込下さるようお願い致します。期日までにお返し頂けない場合は、東京簡易裁判所に訴訟手続をとります。」

5月18日、不動産屋から、敷金18万円を返しますが、原状回復工事の不足分7万円を払ってもらいたいという返事があった。

 それに対して「通常の用法に従った使用に必然的に伴う汚損・損耗は原状回復義務の対象にならない」(東京地判1994年7月1日)とあるように、原状回復費用を賃借人が負担すべき謂れはないとして、工事代金の支払いを拒否する返事をし、少額訴訟の手続をすると伝えた。

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2006年01月23日

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不動産業者から明渡しを強要される
契約は借地借家法に
        違反明渡に応じる必要は無い


台東区浅草橋の原口さんは万策尽き、どうしたらいいのか悩んでいた。マンションを管理している不動産業者から再三に亘って執拗な明渡請求を受けていた。

 今年の3月に契約更新をした。その際、不動産業者に期間6箇月で期間満了後は更新しない旨の賃貸契約を一方的に押付けられた。期間満了後は速やかに退去し、立退料等の金員を請求しない旨の契約内容であった。

 そして6箇月後、契約を盾に業者は強硬に立退きを迫っている。何度か業者と話合おうと思い連絡をしてみたが、契約書の内容を履行しろの一点張りである。
部屋に押掛けて来ては明渡確約書に署名・捺印を強要するのみで、交渉は一切受付けない。
 困り果てて「区民相談センター」に相談すると借地借家人組合を紹介された。

組合は原口さんの契約書を検討した。問題点が浮かび上がった。それが6箇月の契約期間だ。借地借家法29条は、借家人の居住の安定を図るために1年未満の短期の借家契約を禁止している。1年以下の約束で借家契約を結んでも、その期間についての約束は無効とされる。
 契約期間は最短でも1年以上でなければならないと規定する。従って、業者の明渡要求は違法なもので、明渡に応じる必要がないと説明した。

 原口さんは「立退かなくてよいという明確な法律的根拠があることを知りやっと安心することが出来た」と述べ、組合へ加入して頑張ることを誓った。

 借地借家法
 (建物賃貸借の期間)
 第29条 期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。

 (強行規定)
 第30条 この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月22日

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地代を値下げ
固定資産課税台帳の公開で
              地代減額請求の調停の申立


台東区東上野3丁目の下谷神社の裏手に居住する木村さんは、約29坪を借地している。悩みは地代が高いことだ。前回の2002年の調停では1ヵ月4万8800円(坪1688円)の地代が4万1000円(坪1414円)に減額された。

都税事務所で2003年4月1日から借地借家人に固定資産税課税台帳の閲覧及び評価証明書の交付が受けられるようになった。そこで都税事務所に行き固定資産税の評価証明書を交付してもらった。

 東京23区の場合、借地の固定資産税(A)は証明書の「課税標準の特例額」に1.4%を掛ければ、年間の税額が計算出来る。同様に都市計画税(B)は同じく特例額に0.3%を掛ければ求められる。

 計算すると1坪当りそれぞれ222円(A)と48円(B)となる。調査統計から地代は(A)+(B)の2〜3倍なので540〜810円。29坪の借地の1ヵ月の地代は1万5660〜2万3490円が妥当な金額となる。減額後の坪1414円の地代は(A)+(B)の5.2倍ということでまだかなり高額である。

そこで再度、簡易裁判所に地代の減額請求を申立てた。今回も地主は調停に一度も出席しなかった。総て弁護士任せという姿勢は前回と同様であった。立て続けの調停策に地主は困惑したのか、弁護士費用に閉口したのか、今後3年間減額請求を中止するという条件を呑むのであれば、地代の減額に応じる姿勢を見せた。

今回の調停は1ヵ月の地代を3万3500円(坪1155円)に減額するという結果であった。(A)+(B)の約4.3倍でまだまだ高い。固定資産税は毎年下がっているので3年後に再度地代減額請求の調停を計画している。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月21日

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唐突な明渡し
家主の地代不払いが原因で
            借家の立退きを要求される


台東区橋場の武田さんは、15年間借りている店舗併用住宅の明渡要求を通告する唐突な配達証明付き内容証明郵便を受け取った。

 判明したことは、
�@賃借している建物が借地上に建てられていること
�A家主が借地人であったこと
�B明渡要求の通告人が地主であること
�C家主が一年も地代を滞納し、地主に債務不履行を理由に借地契約を解除されたこと
�D借家している建物を取壊すので通知の6ヶ月後に退去しろということであった。

 この時点で武田さんから組合に、地主の明渡要求に応じなければならないのか、何か対応策はあるのかという相談があった。組合は武田さんに判例上は地代の不払い等の債務不履行に基づく解約の場合、借家人は地主に対して賃借権を主張できないので、最終的には明渡さなければならないであろうと説明した。

確かに、判例では借家人が借地権の消滅を防止するために借地人に代わって直接地主に地代を支払うことが出来るというのがある。希望的には、地主が家主の滞納地代と今後の地代を借家人が代払いすることを認めるということであれば、明渡問題は総て氷解してしまうのだが、建物を取壊す目論見があるので地主との交渉は困難が付纏う。

借地契約が解除される場合でも、借家契約は直ちに終了する訳ではない。
 地主と借家人との間で建物・敷地の明渡義務が確定され、地主が建物収去土地明渡の強制執行をして建物の使用収益が現実に出来なくなる等、借家人が現実に建物を使用出来なくなるまで借家契約は終了しないので、それまでは明渡請求に応じる必要はない。

 但し、借家人は建物取壊しまでの間の家賃を支払う義務がある。また地主から地代相当額の損害金の請求を受ける場合もある。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月20日

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住宅金融公庫の廃止で 
 借地上の建物を建替えたいが
             建築資金の借入は借地でも可能か


(問)借地の場合でも、金融機関から建築資金の融資は受けられるのでしょうか。手持ち資金は殆どありません。また、契約書には、増改築禁止の特約があり、地主は建替えに反対しています。

(答)地主が増改築禁止特約を盾に建替えを認めない場合でも、借地人が裁判所から地主の承諾に代わる許可の決定を得れば適法に建替えが行える。

しかし、建築資金の調達に、銀行・信用金庫等の民間金融機関による住宅ローンの利用を考えている場合は、先程の、裁判所の代諾許可の決定だけでは、建替えは殆ど不可能である。

 民間金融機関は、融資の条件として例外なく建物に抵当権を設定する。銀行は借地人を通じて、借地人が建築する建物を金融機関の抵当権(担保)設定することについて地主の承諾書―署名・捺印・印鑑証明書を要求する。更に、借地人の地代の不払いによる借地契約の解除を防止するために地主に対して地代の延滞が発生したら直ちに銀行に通知することを義務付ける確約書面への署名押印を要求する。

 借地人の建替えに反対している地主が、そう簡単に承諾書や確約書に署名押印する訳がない。仮に承諾するとしても借地人の弱みに付け込むことは当然で高額な「判子代」という不当な対価を要求する。

 では、自己資金のない借地人は建替えが本当に出来ないのか。 

 金融公庫等の公的融資を受ければ建築は可能だ。公的融資の場合は借地上の建物に対する抵当権の設定を免除してくれるので先程から問題になっている地主の承諾書はいらない。裁判所の代諾許可の決定があれば、それだけで融資が受けられる。 

 宅金融公庫の融資だけでは資金不足の場合は、厚生年金・国民年金加入者なら、年金融資から「併せ貸し」が利用出来る。また、建物の一部を店舗や賃貸住宅にすれば、その部分は、事業資金として、国民生活金融公庫から融資を受けることが出来、賃貸部分の収入を融資の返済に充てるという方法もある。

 結論、契約書に増改築禁止の特約があり、地主が建築に反対の場合でも、借地人が建築資金不足の場合でも、住宅金融公庫当の公的融資で住宅ローンを組めば建替えは可能である。

  


 住宅金融公庫は2007年4月1日で廃止されることが決定された。従って金融公庫が行っていた個人向け住宅融資は2007年4月1日で原則的に廃止される。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月19日

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賃借の不動産仲介手数料
不動産業者の仲介手数料は
       家賃の半月分プラス消費税(5%)が原則だ


(問)マンション・アパート等の仲介手数料は町の不動産屋では家賃の1.05倍というのが殆どである。しかし、最近テレビCM等で大手不動産会社の仲介手数料は1か月の0.525倍と宣伝している。仲介手数料に関して法改正でもあったのだろうか。

(答)不動産業者が貸借の媒介(仲介)・代理に関して受取ることの出来る報酬額(仲介手数料)は、宅地建物取引業法(宅建業法)第46条1項の規定に基づき、昭和45年10月23日の建設省告示第1552号で定められている。

《貸借の媒介に関する報酬の額》
「宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者双方から受取ることのできる報酬額の合計額は、当該宅地又は建物の借賃の1月分に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1月分の2分の1に相当する金額以内とする。」

このように不動産業者が受取れる仲介手数料は、賃料の1か月分が最高限度であり、宅建業法46条2項では、これ以上の金額を報酬として受取ることを禁じている。
 殊に、居住用建物に関しては、貸主・借主双方から受取れる仲介手数料は家賃の0.5か月分以内とすることを原則としている。

 そのことを説明しないで当然の如く仲介手数料として家賃の1か月分を要求し、受領するのが不動産業界の習慣と化している。悪質な業者は貸主と借主の両者からそれぞれ家賃の1か月分相当の仲介手数料を受領する。貸主に対しては広告費という名目で仲介手数料を受領する。

これなどは明白に宅建業法46条2項に違反する。同法82条で30万円以下の罰金に処せられる行為である。又同法65条2項で1年以内の期間で業務の全部又は一部の停止の行政処分を受けることに繋がる重大な違法行為である。

 賃貸住宅の仲介業界で1位のエイブルと2位のミニミニが家賃の1か月以上の仲介手数料を受領していたとして、この46条2項違反として業界で初めて東京都から2000年3月29日付で「業務の全部停止10日間」の行政処分を受けた。

 尚、消費税の総額表示の実施に伴い、国土交通省告示第100号で前記「1月分」が「1月分の1.05倍」に、「1月分の2分の1」が「1月分の0・525倍」に改正され、2004年4月1日より施行されている。下記参照

   貸借の媒介に関する報酬の額

 宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものである場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。)の1月分の1.05倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1月分の0.525倍に相当する金額以内とする。(最終改正 平成16年2月18日国土交通省告示第100号)

(報酬) 
第46条 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。

2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。

3 国土交通大臣は、第1項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。

4 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第1項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。(宅地建物取引業法)

東京借地借家人新聞より


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2006年01月18日

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内金として受領すると言われた
 内金として受け取ると言われたが、
          賃料を持ち帰って供託してもよいか


 (問)
 賃料の増額を請求され、貸主のところに従来の賃料を持参したが「内金として受け取る」と言われた。賃料を持ち帰って供託してもよいか。


 (答)
 賃料の増額請求をされた場合、借主が相当賃料として従前の額を提供し、貸主がこれを賃料の内金(一部)として受領するという事例は多い。 

 このように貸主が内金として受領する旨を申出たことが民法494条の受領拒否に当るかということが問題になる。
 民法494条の受領拒否に当るかということが争われた事例では、「賃貸人が賃料を弁済の提供を受けた際内金(賃料の一部)として受領する旨述べることは、特段の事情のない以上、賃料の全額として提供されるのであればその受領を拒絶する趣旨を含むものと解することができる」(東京高判1986年1月29日 /同趣旨の判例は名古屋高裁1983年9月28日及び東京地裁1993年5月20日がある)として貸主が受領拒絶をしたと認定し、借主の弁済供託を有効とした。

 従って貸主が「内金(賃料の一部)として受け取る」という趣旨の申出は、賃料の受領拒絶の意思表示と認定され、借主が賃料を持ち帰って供託したことは適法な供託であるとした。

 東借連弁護団会議では、この東京高裁の判例―貸主の内金受領が受領拒絶にあたるかが検討された。弁護団会議の最終結論は、貸主の内金受領が受領拒絶の意思表示であると一般化するのは問題があり、これを実行することには危険が伴うので、従来通りの見解でいくというものであった。

 即ち「貸主が、内金であれ、賃料として受け取ると言った場合は、受領を拒否したものではないので支払わなければならない。それを、賃料全額としては受領を拒否したのだからと考えて供託するのは、供託理由がなくて供託することになるので、その供託は無効となり、賃料未払いとして、契約解除の危険がある。
したがって、借主としては、従来賃料を支払い、念の為貸主に対して、その賃料額が全額であることを意思表示すればよいのである。(この意思表示は、内容証明郵便で出すのがのぞましい。)
なお、受領証に、「内金として」と記載されても、それだけでは、賃料を増額されたことにはならない」
(地代・家賃の供託―東京借地借家人組合連合会パンフレット より)

東京借地借家人新聞より


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2006年01月17日

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法定更新・借家
  契約の更新に際し、契約条件の改悪を
                要求されたら法定更新を選択する


 (問) 3年契約で店舗を借りています。5月末日で契約期間が満了になります。2月に不動産会社が「6月の契約から3年の定期借家契約で」と言ってきました。どうしたらいいでしょうか。

 (答) 営業用店舗は2000年3月1日以降の契約更新の場合、合意があれば定期借家契約への切り替えは出来る。定期借家契約を拒否するには賃借人としては法定更新に持込み今まで通りの普通借家契約を続けるのが営業権を守る安全策であろう。

 以下の�@�Aは借地借家法の法定更新規定の要旨である。
�@期間の定めのある借家契約で期間満了の1年前から6ヶ月前(法定通知期間)までに賃貸人が賃借人に対して、更新拒絶の通知または条件変更の通知をしていなかった場合は、従前の契約と同一の条件で自動的に借家契約が更新され、借家関係は継続される。尚、更新拒絶の通知をするには、正当事由が必要である(借地借家法28条)。

�Aまたその通知をした場合でも、期間満了後、賃借人が継続して建物を利用していることに対して賃貸人が遅滞なく異議を述べないと�@と同様に従前の契約と同一の条件で自動的に更新される(借地借家法法26条)。

�@と�Aは当事者の意思の如何に拘らず、法律上当然に借家契約が更新されるので、これを「法定更新」という。

 相談者の場合は、不動産会社が「法定通知期間」内に適法な更新拒絶の通知を何ら行なっていないので、借家契約は既に従前の契約と同一条件で「普通借家契約」として法定更新されることが確定される。

 このように期間満了の6ヶ月前までに通知をしていないと、その時点で既に契約更新がなされることが法的に決定される。この更新を賃貸人が覆すことは出来ない。

 相談者は不動産会社から繰り返し定期借家契約への切替を執拗に要求されるであろうが、「法定更新は法律上自動的に更新するもので賃借人の回答を必要としない」(東京高判1955年1月21日)のであるから、期間満了の5月末日に法定更新が確定するまで、ただ沈黙していればいい。

 法定更新後の借家契約は期間の定めのないものとして扱われるので原則的に更新問題は起こりえず、定期借家への切替や更新料で揉めることもなくなる。

 借地借家法
 第26条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

 2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

 3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

第28条 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月16日

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建物買取請求権 
更新拒絶で借地契約が終了した場合
          借地人に何か対抗する方法があるか


(問)
 地主が土地の明渡しを求めてきた。借地人は地主に対して借地上の建物を買取らせることが出来るというが、どんな場合に出来るのか。

(答)
 借地契約が終了した場合、本来ならば借地人は建物を取壊し、更地にして返却しなければならない。しかし、使用に耐えられる建物を壊すことは社会経済的利益の保護及び借地人が建物のために投下した資本の回収が出来ない。そこで借地人に「建物買取請求権」(借地借家法13条1項)を設けて借地に投下した資本の回収を可能にした。また間接的に地主に経済的負担をかけることによって更新拒絶を遣難いものにする効果をもっている。

 借地人が建物買取請求権を行使した場合、地主が買取を承諾しなくても、請求があればそれだけで建物の売買契約が成立する。その結果、地主は買取を拒否できず、建物を時価で買取ることになる。

 建物の時価は、「建物が現存するままの状態における価格であって敷地の借地権の価格は加算すべきではないが、この建物の存在する場所的環境は参酌すべきものである」(最高裁1960年12月20日判決)。即ち、地主が支払う建物の時価は建物自体の価格に場所的利益が加算される。この判例では、借地権価格を含めないとしているが、実際は借地権価格を考慮に入れている。

 それでは、どんな場合に「建物買取請求権」を行使出来るのか。一番多いケースは、借地人が更新請求をしたが、地主が更新を拒絶した場合である。
 権利行使の要件は
 �@借地期間が満了したこと
 �A契約の更新がないこと
 �B借地上に建物があることである。

 地主と借地人が合意の上で解約した場合はどうであろうか。
 判例は「土地の賃貸借を合意解除した借地権者は買取請求権を有しない」(最高裁1954年6月11日判決)としている。借地人が買取請求権を放棄したものと解されている。また地代不払い等の債務不履行や契約違反で契約解除された場合も判例は一貫して建物買取請求権を否定している。

 地主と借地人の間で買取価格について協議が纏まらなかった場合は、調停や裁判で適正な買取価格を決定してもらうことも出来る。
 建物の買取価格は、鑑定実務では概ね借地権価格の20〜30%と考えられている。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月15日

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地代を誰に払えばいいのか判らない 
本当の地主が誰なのか判然としないときは
             地代を誰に払ったらよいのか




(問)地主が経営するスーパーが経営不振で閉店した。その後、地主から土地を買ったという人間が現れて、来月から自分の方に地代を支払うようにと言って来た。しかし、地主はまだ所有権は自分にあるので今まで通りに支払うようにと言っている。どちらに支払ったらいいのか。


(答)賃貸不動産が譲渡された場合、その譲受人は、どのような要件を具備したら賃借人に賃料を請求できるのか。民法177条(不動産に関する物件の変動は、不動産登記法に定められた登記がなされて初めて第三者に対抗することができる)は不動産の物件変動を登記によって公示するという考え方を採用し、登記は対抗要件であるとしている。

判例は賃貸不動産の譲受人は所有権移転登記をしない限り賃借人に対して所有権の取得、賃貸人たる地位の承継を主張することが出来ない。賃借人は民法177条の第三者に該当し、譲受人の移転登記がない場合には賃料請求をすることが出来ない(最高裁1974年3月19日判決)。

 これは所有権移転の事実を確実にして、賃借人の二重払いの危険を回避するために登記を保護要件としている。これによって賃借人の保護をしている。即ち、「登記簿上の所有名義人は反証のない限り当該不動産を所有するものと推定される」(最高裁1959年1月8日判決)。登記されていない物件の変動は無視しうるという形で取引の安全が保障され、取引の迅速化が促進される。

 借地人の取りうる態度として第一の方法は登記簿を調べて登記上の権利者に支払うということになる。即ち、譲受人が移転登記を完了していれば新所有者に支払う。移転登記がなされていなければ、地主に支払えば、債権の準占有者(民法478条)へ有効な弁済をしたことになる。

尚、前記1974年最高裁の判例では、新所有者が賃借人の賃借権を否定して明渡を請求する場合にも、登記を具備する必要があるとしている。

第二の方法は、民法494条供託原因による「債権者の確知不能」として供託する。今回のように債権譲渡の通知を受けたが、借地人が賃料の支払の相手が誰なのか断定出来ない場合、「債権者が確知できない」との供託事由により供託することが出来る。供託に関しては各組合へ問合せて下さい。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月14日

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法定更新したにも拘らず更新料を請求される
調停で支払い約束をした更新料は
          法定更新した後も支払い義務があるのか


(問)
 3年前に、更新料を支払って、法定更新をした。それにも拘らず、家主は弁護士を使って更新料の支払を要 求する。平成6年の簡易裁判所の調停で、家賃の一ヵ月分の更新料を支払うという条項があり、それを根拠に支払えというのだ。

(答)
 法定更新は、「適法な更新拒絶の通知、条件変更の通知、および正当事由の立証は賃貸人がしなければならず、この立証がないかぎり賃貸借は法律上当然に更新される」(東京高判1956年1月30日)ということである。

家主は法定通知期間(契約満了の1年前から6か月前)に適法な更新拒絶・条件変更の通知を行っていない。相談者の借家契約は、借地借家法26条1項の規定に基づいて適法に、従前の契約と同一の条件で3年前に法定更新されている。

法定更新後の借家契約の契約期間は26条の但し書により「定めがないものとする」ということになる。従前の3年契約のように契約に期間を区切って更新を繰返す契約ではないので、法定更新すれば以後契約の更新という事態は生じない。更新は法的に発生しないから更新料の支払い問題は発生する余地はない。

関係する判例を挙げると、
�@「賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習は、存在しない」(最判1976年10月1日)。

�A「法定更新の場合、賃借人は何らかの金銭的負担なくして更新の効果を享受することが出来るとするのが借家法 の趣旨であると解すべきものであるから、たとえ建物の賃貸借契約に更新料支払い約定があっても、その約定は、法定更新の場合には適用の余地がないと解するのが相当である。」(東京高判1981年7月1日)。

�B更新前の調停・和解の効力は、「更新された賃貸借は旧契約とは別個のものだから更新前の調停・和解の執行力は新賃貸借には及ばない。」(広島地判1966年6月6日、大阪地判1971年6月26日)。

相談者が簡裁で合意した調停条項の「更新料として新賃料の1か月分を支払う」という調停の効力は、法定更新された契約には及ばないことは勿論のことである。
 以上のことから、家主の更新料支払い請求は理由がない。相談者は家主の不当な更新料支払請求を拒否することが出来る。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月13日

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更新手数料を請求された 
不動産管理会社から不当な更新手数料を
請求されても支払う必要はない

(問)
家主に支払う更新料以外に管理会社から更新手数料の請求が来た。契約書をみると確かに特約として更新の際には更新料と更新手数料が必要であるという記載があった。更新手数料の支払を拒否することが出来るのか。

(答)
元来は契約の更新は家主と借主の間で行うものであった。しかし、家主が自ら更新手続きを行うことを煩わしく思い、家主の代理人として管理会社に業務を委託することがある。

 その場合、家主は管理会社に契約更新の手数料を支払うことになる。管理会社は更新手数料を家主から受け取れば業務終了ということになるが、中には家主から手数料以外に借主からも何の合理的理由も無く更新手数料を請求してくる業者もある。家主から受け取るべき手数料を総て借主に転嫁して徴収する悪質な業者もある。

一般的には更新に関与する業者は、家主から委託を受けて更新事務を行うものであるからその労務報酬は家主が負うべきものである。支払うべき理由も無いのに手数料を徴収するというのは不当利得に当り、もし既に支払っているのであれば、支払った手数料の返還請求をすべきである。裁判所に提訴して過去に支払った手数料を全額返還させた例もある。

 ところが常識的に支払う必要が無い費用を「特約」として入れた場合、判例では、
 �@特約の必要性に加えて暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在する
 �A通常の義務を超え義務を負うことについて認識している
 �B借主が特約による義務負担の意思表示をしていること
 以上3つの用件を充たしている場合でなければ特約として認められないのが裁判例である。

先ず借主が管理会社に更新手続きを依頼していないので更新手数料を支払う必要性や支払う合理的な理由があるとは考えられない。
従って契約書に更新手数料の記載があるとしても「特約」として認められないということになる。

 2001年4月以降に結ばれた契約及び、更新した契約書の中にそのような特約があれば消費者契約法10条の「消費者の利益を一方的に害する条項」に該当し、そのような特約は無効ということになるので、借地借家人組合に相談してみるべきである。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月12日

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法定更新した場合の約定更新料は
更新料支払特約は法定更新の場合には
               適用が無く更新料支払義務は無い



(問)
 京都地裁で更新料支払特約があっても契約を法廷更新した場合には、借主に更新料支払義務は無いという借家での判決があった。他に約定更新料の支払義務無しという借家に関する高裁又は最高裁の判例はあるのか。

(答)
 東京では更新料特約がある場合、契約を法定更新した時に更新料の支払義務の有無が裁判で幾度となく争われている。 
具体的な判例で検討してみる。借主Aは、賃貸マンションを期間2年、更新の際は新家賃の2ヵ月分の更新料を支払うという更新特約が有る契約を結んだ。2年後の更新時に家賃の増額で紛糾し、合意更新ができなかった。Aは更新料を拒否し、相当と思われる家賃を供託し、法定更新の途を選択した。貸主は増額家賃・更新料の不払を理由に契約解除を通告し、未払家賃・更新料の支払と建物明渡を求めて提訴した。

 地裁は、約定更新料は法定更新には適用されず、支払義務は無いとしてAの主張を全面的に認め、貸主の請求を棄却した。

 控訴を受けて東京高裁は「法定更新の場合、賃借人は何らの金銭的負担なくして更新の効果を享受することができるとするのが借家法の趣旨であると解すべきものであるから、たとえ建物の賃貸借契約に更新料支払の約定があっても、その約定は、法定更新の場合には適用の余地がない」(東京高裁1981年7月15日判決)とした〈注1〉。

 この判決を不服として貸主が上告したが、最高裁は上告を棄却した。
 最高裁は「本件建物賃貸借契約における更新料支払の約定は特段の事情の認められない以上、専ら右賃貸借契約が合意される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではない」(1982年4月15日判決)と明快な判断を下している〈注2〉。

  このように更新料支払特約は合意更新を想定したもので、法定更新には適用されない。これは当然の結論である。借地借家法は経済的負担の無い法定更新を定めている。更新料特約は法の趣旨に反して借主に不利益な経済的負担を課している。特約が法定更新の場合にも適用されるとすれば、それは実質的に経済負担を強制する合意更新を義務付け、無償の法定更新を排除するに等しい。換言すれば法定更新制度の否定である。

     


 〈注1〉「借地・借家 更新料について」(東京借地借家人組合連合会500円)の資料4に判決が掲載されている。

 〈注2〉「借地・借家 更新料について」の資料3に判決全文が掲載されている。

 「借地・借家 更新料について」は東京借地借家人組合連合会 03-3263-7074へ問い合わせてください。

東京借地借家人新聞より


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2006年01月11日

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原状回復費の負担割合は使用年数を考慮する
借主に過失がある場合は減価償却分を
差引いた残りが費用負担分である


(問) 不注意で壁のクロスに傷をつけ、30�p位破れてしまった。入居してほぼ4年になるが、退去する場合部屋全体のクロスを張替え、その費用を全額負担しなければならないのか。

(答) この質問に関しては、東大阪簡易裁判所の判決が参考になる。

 裁判は子供が描いた落書の壁クロスの張替え費用負担をめぐって争われた。壁クロスには落書(1�u未満)が11箇所に亘って描かれていた。

判決は「国土交通省(旧建設省)発行のガイドラインによればクロスは過失による部分の補修で足り、経過年数により賃借人と賃貸人の負担割合を算出するべきとある。反訴原告(賃借人)の居住期間は4年9ヶ月(57ヶ月)であり、入居時において新品であったとしても、6年(72ヶ月)で賃借人負担(残存価値)割合は10%となるような直線で考えると、賃借人即ち反訴原告の負担割合は28・75%になる。本件について試算すると下記の試算式となる。1050円(単価)×11�u(負担範囲)×28・75%(負担割合)=3320円すなわち、反訴原告(賃借人)の負担すべき原状回復費用は金3320円という事になる」(東大阪簡裁2003年1月14日判決)と判断した。

 国交省のガイドラインは6年(72ヶ月)で減価償却を90%としている。以後、何年経過しようとも残存価値は10%で一定としている。
 判決は国交省のガイドラインに随ってクロスの減価償却は1ヶ月当り1・25%としている。
 従って判決文にある57ヶ月の減価償却は71・25%(1・25%×57ヶ月)ということになり、その残存価値は28・75%になる。

 今回の質問に対しては4年(48ヶ月)で退去し、入居時のクロスが