2008年04月の記事


国内仏教者への要望と中国首脳への抗議
 ここのところチベット弾圧に関する日本国内の仏教界の動きについての話題を取り上げることが続いてますが、まだ何度か続けることになりそうです。

 チベットの人々の半世紀以上にわたる受難について、日本ではあまり知られていませんでしたが、かつてない程関心を集めるようになってきています。人気のフリーペーパー、R25でも取り上げられてます
しかしまだまだ日本での認知度の低さは先進諸国の中では特異的でしょう。

 さて、長野での聖火リレーの出発地として予定されていた善光寺が、それを辞退することを決定し、大きな話題となっているのでもう皆さんは御存知のことと思います。国内では勿論ですが、海外でもかなり注目されているようです。

 また、こうした事態に、全日本仏教会も方針を改めることを迫られているようです

 実はここからが元々書く予定だった話です。上記の話は急遽付け足すことになったものです。予定していたのは全日本仏教会会長にも宛てられた要望書を含むものだったので、丁度内容的にもつながりの深いものになりました。

 私も何度かお店にお邪魔させて頂いており、そこで講演依頼も受けていていずれお応えしたいと考えておりますが、中野でバーのマスターとして仏縁を広める活動をされてることが最近話題として取り上げられることも増えてきた浄土真宗大谷派の僧職、釈源光さんが釈尊の降誕会に因んだ阿佐ヶ谷でのイベントで百名程の聴衆を前に、このように声明を発表されましたので御紹介させて頂きたいと思います。



               抗  議  文

中国政府首脳殿


「中野・坊主バー」は、この度のラサに始まった貴国内各地でのチベット人民への武力制圧・僧侶らへの宗教弾圧・一般市民への迫害行為等、数々の非人道的行為並びに連日にわたる人権無視の強行措置に対して、断固抗議致します。

貴国が、幾ら最大限のメディア統制と自国に不利な情報の隠蔽工作を内外に徹底させたにせよ、真実はいずれ必ず世界に知れ渡るでしょう。
日本のメディアも国民も、また私どもを含むこの国の宗教者・仏教者も、今回の貴国の暴挙を深く憂慮しながら注視しています。

かつてお釈迦様は「差別なく全ての衆生に等しく<仏性>がある」とお説きになりました。
それ以来仏教は、かけがえのない諸個人の<いのち>を、何よりも大切にする宗教です。

今日の国際社会において、如何なる理由があろうとも、信仰を武力で制圧することは断じて許されません。 チベット仏教の伝統や「信教の自由」を奪うことは、誰にも出来ません。

私どもは、間近に迫った<平和の祭典>北京オリンピックを成功させて欲しいと願うものであるが故に、少なくとも開催国である貴国政府は、チベット民衆へのこれまでの歴史的な差別待遇と不当な介入を直ちに中止し、対等な話合いによる平和的な政治解決を目指すべきであると考えます。

また、ウィグル民衆への同様な横暴も、直ちに中止するよう、この場を借りて要望いたします。

生きとし生けるものに幸あれ。
南無阿弥陀仏。合掌。

2008年4月8日(潅仏会)
真宗大谷派瑞興寺僧侶
中野坊主バー・マスター:釈 源光


                  要  望  書


真宗大谷派(東本願寺)宗務総長 熊谷 宗惠殿
全日本仏教会 会長殿
国内仏教者 各位 


この度の中国政府による、国内チベット人やウィグル人への人権弾圧、及び武力による仏教徒制圧等に関し、お釈迦様の「差別なくこの世の全ての衆生の<仏性>を尊ぶ」教えに仕える坊主の端くれとしての私は、いたずらにじっと指を咥えて静観することが出来なくなりました。

しかしながら、一僧侶だけではいかにも力になりません。

そこで、日本で有数の門信徒数を誇るわが浄土真宗大谷派の全組織を挙げて、断固たる抗議声明を、かの国の政府宛てに直接表明していただきたく、ここに要望するものであります。
ちなみに、すでに本願寺派は、早々と宗務総長名義で声明文を公けにしています。

また、私ども一宗派を超えて、この国の全仏教徒各人が、自らの所属する仏教教団の各代表責任者に対して、一致団結して決然たる抗議の記者会見を、一刻も早く国際社会に向けて開催し、共同声明を公表していただけるよう、切に要望いたします。

今日のボーダレスな情報化社会、危機的な地球環境下におきまして、仏教者のみならず全宗教者が、互いに共存・協力しあって人類の平和と幸福に対して積極的に助言や警告を発していかなくば、何のための教え、誰のための宗教なのでありましょうか?

いまこそ日本大乗仏教の出番です。私たち宗教者は、世界に見られています。

どうか、中国国内の仏教の今後の健全な発展のためにも、チベット仏教の貴重な伝統を守るためにも、ウィグル民衆の自由と人権のためにも、かの国の政府首脳宛てに、勇気ある発言と、毅然とした公開抗議文を、世界に向けて一刻も早く提出していただきたく、ここに要請いたします。

南無阿弥陀仏。合掌。

2008年4月8日(潅仏会)
真宗大谷派瑞興寺僧侶
中野坊主バーマスター: 釈 源光



 このような心ある僧の声、そして一般の仏教徒、また仏教徒ではなくとも苦しみの中にある人々に対する慈悲に根ざす草の根の声が高まって多くの人の心を動かし、やがては実を結ぶと信じ、これからもこの問題について私自身僧籍にある者として、仏教者として意義あると思える活動を宗派問わず紹介させて頂くことを通して僅かなりとも力になりたいと思います。
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中国政府のチベット武力行使の即時中止を求める緊急要請書
 中国によるチベットへの弾圧は何も今に始まったことではありませんが、先月に始まる大規模なチベット弾圧事件(暴動という表現は不適切と考えます)は世界的に大きな注目を集め、日本国内でも仏教界に抗議の声が上がらないことへの批難が目立ちはじめたのでここ最近は2回にわたってそれに関する話をしましたが、実はいち早く明確な抗議行動を起こされた僧侶を含む宗教者の方々の話がどういうわけか殆ど知られてないようで不思議に思いましたので、これについて御紹介したいと思います。

http://www.shinshukyo.com/webup/back08/backframe03.21.htm

を見ると、“僧侶やキリスト者、 中国大使館へ要請書”という項目があり、日本山妙法寺の呼びかけで、カトリック、プロテスタント、浄土真宗の各宗教者有志が大使館に向かいアピールと祈念を行い、「中国政府のチベット武力行使の即時中止を求める緊急要請書」が読み上げられ、代表者4人が要請書を大使館から支持されたポストに投函したことが報じられています。

要望書の内容は日蓮宗の僧侶のかた(上記のグループとは無関係)がブログで紹介しているのを見つけることが出来ました。

中国政府のチベット武力行使の即時中止を求める緊急要請書

南無妙法蓮華経
中国政府は、チベットの僧侶・市民への武力行使をただちに中止してください。中国政府は武力の行使を自制し、流血の拡大を避けるべきです。そして、何よりもダライ・ラマ14世との対話の道を閉ざしてはなりません。ダライ・ラマ14世との対話の進展は、中国の名誉回復と北京五輪の成功に必ず役に立つはずです。日本政府も、チベット情勢への懸念を表明し、武力によらない対話による解決を呼びかけるべきです。私達は同じ仏教徒として、チベットの人々の安心立命を祈ります。チベットの人々の苦しみは、私たちの苦しみです。チベットに平和を!チベットに自由を!チベットに、平和と自由と高度な自治がもたらせられますように、心から祈ります。合掌 中華人民共和国国家主席・胡錦涛様 2008年3月19日 仏教僧伽 日本山妙法寺

 これがチベットをめぐるネット等での話題に今迄あまりにもわずかしか出てないのが謎なんですが、他にも不可解なことがあって、それというのも前回ここでYouTubeの動画を紹介しましたが、同様の動画が削除されてるそうで、それは著作権者の意向とは違うらしい。僕の紹介した動画も一つ目が削除されてます。何故こんなことが起こるのでしょう?
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日本の仏教界とチベット擁護
 前回ここで、チベット弾圧事件に対して日本の仏教界から明確な抗議が出にくいのは何故かということに関する考察に触れた話をしましたが、先の週末、関西のTVで有名寺院の僧侶の方がチベット情勢に関した思いを訴えられ、ネットを通じてかなり大きな話題になっているようですが、その内容が前回書いた指摘と重なるものであったので、やはり…と思いました。どうぞ御覧下さい。

http://jp.youtube.com/watch?v=BOfvNdd-esk


書き起こしされた方もいらっしゃったので頂いて参りました。転載歓迎とのことですので、一部漢字や句読点を適切と思われるものに改めてここに転載致します。

 「いま私たち日本の仏教者の真価が問われています。チベットでの中国の武力行動によって、宗教の自由が失われる事に、心から悲しみと止むに止まれぬ抗議を表明せずにはいられません。私たちはあくまでも宗教者、仏教者として僧侶をはじめとするチベット人の苦しみをもはや黙って見過ごす事ができません。チベット仏教の宗教的伝統をチベット人の自由な意思で守ると言う事が大切な基本です。皆さんは日本の全国のお坊さんがどうしているのかとお思いでしょう。日本の各宗派、教団は日中国交回復の後、中国各地でご縁のある寺院の復興に力を注いできました。私も中国の寺院の復興に携わりました。しかし、中国の寺院との交流は全て北京(政府)を通さずにはできません。ほとんど自由が無かった。これからもそうだと全国のほとんどの僧侶は知っています。そして日本の仏教教団がダライ・ラマ法王と交流する事を北京(政府)は不快に思う事も知られています。あくまでも、宗教の自由の問題こそ重大であると私は考えています。しかし、チベットの事件以来、3週間以上が過ぎてなお、日本の仏教界に目立った動きは見られません。中国仏教界が大切な友人であるなら、どうして何も言わない、しないで良いのでしょうか?ダライ・ラマ法王を中心に仏教国としての歴史を重ねてきたチベットが今、亡くなろうとしています。私たちは宗教者、仏教者として草の根から声をあげていかなければなりません。しかし、私の所属する宗派が中国の仏教界関係者から抗議を受けて、私はお叱りを受ける可能性が高いし、このように申し上げるのは私たちと行動を共にしましょうという事ではないのです。それぞれのご住職、壇信徒の皆さんがこれをきっかけに自ら考えていただきたいのです。オリンピックに合わせて中国の交流のある寺院に参拝予定の僧侶もいらっしゃるでしょう。この情勢の中、中国でどんなお話をされるのでしょう。もしも宗教者として毅然とした態度で臨めないのならば私たちはこれから、信者さん檀家さんにどのような事を説いて行けるのでしょう。私たちにとってこれが宗教者、仏教者であるための最後の機会かも知れません。書寫山圓教寺執事長大樹玄承 平成20年4月5日」

如何でしょう?これを英訳した字幕付に映像を編集された方もいらっしゃったようですので、ここに紹介致します。

http://jp.youtube.com/watch?v=XotGwGJiwzU


 これを御覧いただければ、我国の仏教界からチベット問題に対する毅然とした発言が出にくい事情の一端がよくわかると思います。
実は天台宗に対しては、中国の寺院との交流事業に熱心なイメージを持っていたので、チベットの問題に対する反応については最も期待できない宗派だと思っていたのですが、こういう方が出て来ちゃったりするところもある意味天台らしさかなとも思います。

こういった事情が日本の仏教界全てに当てはまるという訳でもないとも思いますし、他の事情もあろうかと思いますが、このお寺さん周辺の背景には仰る通りの事情があることと思います。表立って中国政府に不快感を持たれるような行動をすることは、宗門僧侶としての前途を断たれる恐れすらあるのではないでしょうか?似通った立場の方も少なくないと思います。
 つまり、こういった行動を取れる僧侶は、自らを犠牲にしてでも他者の為に難行に挑む貴重な存在と言えると思います。そういう方を大事にしなければ、日本の仏教は亡びてしまうでしょう。
 仏教の未来は、信徒の方々が、どのような僧侶を支えるかということにかかっていると考えて頂きたいと思います。

 参考までに、各宗派による表明を紹介して言及されてるブログを挙げておきます。

http://honyouji.blog.so-net.ne.jp/2008-04-05

http://www.higan.net/blog/news/2008/04/post_39.html
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