日本の仏教界とチベット擁護
 前回ここで、チベット弾圧事件に対して日本の仏教界から明確な抗議が出にくいのは何故かということに関する考察に触れた話をしましたが、先の週末、関西のTVで有名寺院の僧侶の方がチベット情勢に関した思いを訴えられ、ネットを通じてかなり大きな話題になっているようですが、その内容が前回書いた指摘と重なるものであったので、やはり…と思いました。どうぞ御覧下さい。

http://jp.youtube.com/watch?v=BOfvNdd-esk


書き起こしされた方もいらっしゃったので頂いて参りました。転載歓迎とのことですので、一部漢字や句読点を適切と思われるものに改めてここに転載致します。

 「いま私たち日本の仏教者の真価が問われています。チベットでの中国の武力行動によって、宗教の自由が失われる事に、心から悲しみと止むに止まれぬ抗議を表明せずにはいられません。私たちはあくまでも宗教者、仏教者として僧侶をはじめとするチベット人の苦しみをもはや黙って見過ごす事ができません。チベット仏教の宗教的伝統をチベット人の自由な意思で守ると言う事が大切な基本です。皆さんは日本の全国のお坊さんがどうしているのかとお思いでしょう。日本の各宗派、教団は日中国交回復の後、中国各地でご縁のある寺院の復興に力を注いできました。私も中国の寺院の復興に携わりました。しかし、中国の寺院との交流は全て北京(政府)を通さずにはできません。ほとんど自由が無かった。これからもそうだと全国のほとんどの僧侶は知っています。そして日本の仏教教団がダライ・ラマ法王と交流する事を北京(政府)は不快に思う事も知られています。あくまでも、宗教の自由の問題こそ重大であると私は考えています。しかし、チベットの事件以来、3週間以上が過ぎてなお、日本の仏教界に目立った動きは見られません。中国仏教界が大切な友人であるなら、どうして何も言わない、しないで良いのでしょうか?ダライ・ラマ法王を中心に仏教国としての歴史を重ねてきたチベットが今、亡くなろうとしています。私たちは宗教者、仏教者として草の根から声をあげていかなければなりません。しかし、私の所属する宗派が中国の仏教界関係者から抗議を受けて、私はお叱りを受ける可能性が高いし、このように申し上げるのは私たちと行動を共にしましょうという事ではないのです。それぞれのご住職、壇信徒の皆さんがこれをきっかけに自ら考えていただきたいのです。オリンピックに合わせて中国の交流のある寺院に参拝予定の僧侶もいらっしゃるでしょう。この情勢の中、中国でどんなお話をされるのでしょう。もしも宗教者として毅然とした態度で臨めないのならば私たちはこれから、信者さん檀家さんにどのような事を説いて行けるのでしょう。私たちにとってこれが宗教者、仏教者であるための最後の機会かも知れません。書寫山圓教寺執事長大樹玄承 平成20年4月5日」

如何でしょう?これを英訳した字幕付に映像を編集された方もいらっしゃったようですので、ここに紹介致します。

http://jp.youtube.com/watch?v=XotGwGJiwzU


 これを御覧いただければ、我国の仏教界からチベット問題に対する毅然とした発言が出にくい事情の一端がよくわかると思います。
実は天台宗に対しては、中国の寺院との交流事業に熱心なイメージを持っていたので、チベットの問題に対する反応については最も期待できない宗派だと思っていたのですが、こういう方が出て来ちゃったりするところもある意味天台らしさかなとも思います。

こういった事情が日本の仏教界全てに当てはまるという訳でもないとも思いますし、他の事情もあろうかと思いますが、このお寺さん周辺の背景には仰る通りの事情があることと思います。表立って中国政府に不快感を持たれるような行動をすることは、宗門僧侶としての前途を断たれる恐れすらあるのではないでしょうか?似通った立場の方も少なくないと思います。
 つまり、こういった行動を取れる僧侶は、自らを犠牲にしてでも他者の為に難行に挑む貴重な存在と言えると思います。そういう方を大事にしなければ、日本の仏教は亡びてしまうでしょう。
 仏教の未来は、信徒の方々が、どのような僧侶を支えるかということにかかっていると考えて頂きたいと思います。

 参考までに、各宗派による表明を紹介して言及されてるブログを挙げておきます。

http://honyouji.blog.so-net.ne.jp/2008-04-05

http://www.higan.net/blog/news/2008/04/post_39.html