エンタテインメントとしてのプロ野球
 メジャーリーグ、シアトルマリナーズで活躍するイチロー選手が、10月1日(現地
時間)に、年間最多安打の記録を84年ぶりに塗り替えた。この試合は、アメリカだけ
ではなく、日本でも放送されていたので、リアルタイムでご覧になった方も多いだろ
う。Asahi.comによると、「大リーグ、マリナーズのイチロー選手が年間最多安打新
記録を達成した第2打席を中継した2日正午前のJNNニュース(TBS系)の平均
視聴率は、9.9%だったことがわかった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。同時
間帯では一番高かった。瞬間最高視聴率は、記録達成後にチームメートらがイチロー
選手に駆け寄り、試合が中断していた午前11時56分の13.1%だった。また、
NHK衛星第1の試合中継(午前11時〜午後2時18分)の平均視聴率は7.2%
(同)だった。」という。
 
 そしてイチロー選手の最多安打記録の更新のニュースと時を同じくして、日本のパ
リーグでは、今季から導入されたプレーオフの第1ステージの3連戦が行われてい
た。レギュラーシーズンで1位を獲得した、福岡ダイエーへの挑戦権をかけて、2位
の西武と、3位の北海道日本ハムとが対戦した。シーズン中の順位が上である西武が
初戦に勝利を収めたために日本ハムは後がなくなってしまうが、執念で第2戦に勝利
を収める。最終戦では、日本ハムが初回に先制するものの3回に西武が満塁ホームラ
ンで逆転する。その後9回表にまた、日本ハムが2ランホームランで逆転するが、な
んとその9回裏に先頭打者の和田が劇的なサヨナラホームランを打ち勝利を決めた。
その一進一退の息を呑む攻防は、普段はあまり野球に興味がない主人まで、身を乗り
出してテレビに釘付けになってしまうほどだった。

 しかし、このイチロー選手の活躍やパリーグのプレーオフの盛り上がりとは逆に、
今季の巨人戦の平均年間視聴率は過去最低で、オリンピック期間中には、18番組が一
桁代を記録したほどで、来年の放送権料にも影響を及ぼしそうだという。

 前述のプレーオフで熱い戦いを見せてくれた日本ハムは、今季から、本拠地を東京
ドームから、北海等のサッポロドームに遷した。ストで試合数が減ったにも関わら
ず、今季の観客動員数は前年の2割増になり、ファンクラブの会員数は、実に7倍も
増えたという。(asahi.com北海道より)これは、北海道がプロ野球の空白地域で
あったことが大きく影響していると思うが、メジャーリーグから移籍した新庄選手の
影響もかなり大きいものがあると思う。新庄選手は、試合中の魅力あるプレーだけで
はなく、試合前にスパイダーマンの被り物のパフォーマンスをするなど、心にくい
ファンサービスを常に心がけていたことも、要因の一つであるといえるだろう。

 イチロー選手が年間最多安打記録を達成した後のインタビューで、今季マリナーズ
が最下位であった中での記録達成についてどう思うか、という問いかけに対して、
「僕達はプロなので、常に勝つことだけが目標で野球をしているわけでない。プロで
あるということは、エンターテイナーであるべきなので、常に観客を沸かせるような
エンタテインメントを見せたい」と語っていた。そう、プロ野球はスポーツでありエ
ンタテインメントなのである。つまり、某チームのオーナーのようにファンの存在
や、パフォーマーである選手の存在を無視しては、成立しえないと思う。そのことを
現オーナーの人達や、プロ野球に関わる全ての人に、強く認識もらうことで、来季は
よりいっそう魅力あるシーズンにして欲しいと思った。