2004 09/15 09:21
Category : 日記
先日、親友のママ友と買い物に行った先で、知人の女性に偶然会った。彼女夫婦と
は、我が家とも親友一家とも家族ぐるみでお付き合いをしている。そのときは、レジ
で清算している親友を、私が少し離れたところで待っていた。そのすぐ横を、彼女が
通りかかったのだ。私が声をかけると、彼女は立ち止まりしばしの立ち話が始まっ
た。「今日も暑いね」などという当たり障りの無い会話をしているところへ、友人が
会計を終えてやってきたのを見て、「待ち合わせだったんですね、それじゃあまた」
と彼女は軽く会釈をしてその場を去ろうとした。その彼女の横顔がすこしやつれてみ
えた。私は彼女の背中に越しに、「なんかやつれたみたいだけど大丈夫、毎日暑いか
ら無理しないでね」と声をかけた。すると・・・、彼女は立ち止まり、そこにしゃが
みこんでしまった。貧血でも起こしたのかと、私と親友で駆け寄ってみると、ハンカ
チで顔を押さえて泣いていた。事情のわからない私たちは、とりあえず落ち着けると
ころに場所を移して彼女と話をすることにした。
彼女は結婚して5年になるが、まだ子どもはいない。子どものことで、お姑さんか
ら毎日のように電話があり、催促をされるのだという。今朝も、年金法案の出生率が
予定より低くなっていたという話を持ち出して、「早く子どもを作った方がいい」と
長々と話をされたのだという。「子どもを産めばいいのかもしれないけれど」と彼女
は、遠い目をしながらボソッとつぶやいた。彼女達に夫婦に子どもが欲しいという気
持ちはあるのだ。私は、その言葉を聞いて「それは違うと思うよ」と言った。「子は
かすがいというけどね、子どものことが原因で喧嘩している夫婦は多いよ。子どもの
叱り方が気に入らないとか、教育方針がどうだとかって」。親友も「うんうん」と頷
いていた。それを聞いて彼女は「そうかもしれない」と言った。年金法案の話まで持
ち出すお姑さんにも絶句したが、それをまともに受け止めて傷ついてしまうほど、彼
女が疲れているのかと思ったら、私はやるせない気持ちがした。
彼女のご主人は、結婚を機に独立し自分で仕事を始めた。その仕事の関係で、我が
家とも、親友の家とも知り合い付き合いを始めるようになったのだ。独立から5年が
経ち、周りから見たこの不景気にもかかわらず、頑張って順調にやっているように見
えたのだが、内情はすこし違うらしい。独立したことで、ご主人はお休みの日でも
ずっと仕事をしているのだという。そのために、彼女にいわゆる新婚生活のようなも
のは無かったらしい。まあ、新婚早々ご主人は夜中にならないと帰宅をしないという
ご家庭は他にもあるかもしれないが、彼女のご主人の場合は、私たちが知っている温
厚な外見とは違い、内弁慶で仕事でのストレスを彼女にぶつけてしまうことがあるの
だ。
そのために彼女は、離婚を考えた時期もあったらしい。ただ、原因の一部が彼女に
あることも彼女自身は認めていた。それは、几帳面な性格の彼女はささいな事でヒス
テリーを起こして、ご主人が口を開く間もないほどの勢いで攻め立ててしまうらしい
のだ。そのために、普段無口なご主人は、仕事のストレスなどの影響もあり、手が出
てしまうこともあるらしい。彼女の話を聞いていると、お互いに大人として成熟して
いない部分を持った男女が結婚して、お互いのわがままをぶつけ合ってしまっている
ように見えた。しかもそこへ、お姑さんや世間から「結婚しているのに子どもを産ま
ないとは何事だ!」というプレッシャーを与えられる。しかし、夫婦としてやってい
かれるのかという部分で悩んでいる彼女に、「社会のために子どもを産め」と言って
も、それは無理な話だろう。そして、そのプレッシャーによって彼女は体調を崩し、
顔面神経痛になってしまったことすらあったという。
話をしているうちに、彼女の中に今の社会全般に対しても、不安を持っていること
がわかった。混迷し迷走しているとしか言いようのない、国会と日本という国のゆく
へ。世界中から毎日のように流れてくるテロのニュース。その一つ一つが、真面目で
几帳面な性格の彼女の中に、一つ一つ不安の要素として積み上げられていく。しか
し、周りからは「子どもを産めと矢の催促がくる。結婚して5年が経っても、自分達
夫婦の未来も見えないままの状態で、彼女は何を信じていいのかもわからないほど困
惑し、衰弱していく。そして、唯一彼女の中の母性本能だけが「こんな状態で子ども
は産めない」と声にならない声で叫んでいるようだった。
私と親友は、子どものことは気にせずに、夫婦としての時間を大切にすることから
始めたらと話をした。そして、私たちでよければいつでも話を聞くから、一人で抱え
こまないようにと言った。帰り際、彼女は少しだけホッとしたような穏やかな顔つき
で、「またお茶しましょうね」と笑顔を見せてくれた。彼女と同じような想いを抱え
た女性はどのくらいいるだろう。少子化は決して彼女達だけのせいではないというこ
とを、伝えてあげたいと思った。
は、我が家とも親友一家とも家族ぐるみでお付き合いをしている。そのときは、レジ
で清算している親友を、私が少し離れたところで待っていた。そのすぐ横を、彼女が
通りかかったのだ。私が声をかけると、彼女は立ち止まりしばしの立ち話が始まっ
た。「今日も暑いね」などという当たり障りの無い会話をしているところへ、友人が
会計を終えてやってきたのを見て、「待ち合わせだったんですね、それじゃあまた」
と彼女は軽く会釈をしてその場を去ろうとした。その彼女の横顔がすこしやつれてみ
えた。私は彼女の背中に越しに、「なんかやつれたみたいだけど大丈夫、毎日暑いか
ら無理しないでね」と声をかけた。すると・・・、彼女は立ち止まり、そこにしゃが
みこんでしまった。貧血でも起こしたのかと、私と親友で駆け寄ってみると、ハンカ
チで顔を押さえて泣いていた。事情のわからない私たちは、とりあえず落ち着けると
ころに場所を移して彼女と話をすることにした。
彼女は結婚して5年になるが、まだ子どもはいない。子どものことで、お姑さんか
ら毎日のように電話があり、催促をされるのだという。今朝も、年金法案の出生率が
予定より低くなっていたという話を持ち出して、「早く子どもを作った方がいい」と
長々と話をされたのだという。「子どもを産めばいいのかもしれないけれど」と彼女
は、遠い目をしながらボソッとつぶやいた。彼女達に夫婦に子どもが欲しいという気
持ちはあるのだ。私は、その言葉を聞いて「それは違うと思うよ」と言った。「子は
かすがいというけどね、子どものことが原因で喧嘩している夫婦は多いよ。子どもの
叱り方が気に入らないとか、教育方針がどうだとかって」。親友も「うんうん」と頷
いていた。それを聞いて彼女は「そうかもしれない」と言った。年金法案の話まで持
ち出すお姑さんにも絶句したが、それをまともに受け止めて傷ついてしまうほど、彼
女が疲れているのかと思ったら、私はやるせない気持ちがした。
彼女のご主人は、結婚を機に独立し自分で仕事を始めた。その仕事の関係で、我が
家とも、親友の家とも知り合い付き合いを始めるようになったのだ。独立から5年が
経ち、周りから見たこの不景気にもかかわらず、頑張って順調にやっているように見
えたのだが、内情はすこし違うらしい。独立したことで、ご主人はお休みの日でも
ずっと仕事をしているのだという。そのために、彼女にいわゆる新婚生活のようなも
のは無かったらしい。まあ、新婚早々ご主人は夜中にならないと帰宅をしないという
ご家庭は他にもあるかもしれないが、彼女のご主人の場合は、私たちが知っている温
厚な外見とは違い、内弁慶で仕事でのストレスを彼女にぶつけてしまうことがあるの
だ。
そのために彼女は、離婚を考えた時期もあったらしい。ただ、原因の一部が彼女に
あることも彼女自身は認めていた。それは、几帳面な性格の彼女はささいな事でヒス
テリーを起こして、ご主人が口を開く間もないほどの勢いで攻め立ててしまうらしい
のだ。そのために、普段無口なご主人は、仕事のストレスなどの影響もあり、手が出
てしまうこともあるらしい。彼女の話を聞いていると、お互いに大人として成熟して
いない部分を持った男女が結婚して、お互いのわがままをぶつけ合ってしまっている
ように見えた。しかもそこへ、お姑さんや世間から「結婚しているのに子どもを産ま
ないとは何事だ!」というプレッシャーを与えられる。しかし、夫婦としてやってい
かれるのかという部分で悩んでいる彼女に、「社会のために子どもを産め」と言って
も、それは無理な話だろう。そして、そのプレッシャーによって彼女は体調を崩し、
顔面神経痛になってしまったことすらあったという。
話をしているうちに、彼女の中に今の社会全般に対しても、不安を持っていること
がわかった。混迷し迷走しているとしか言いようのない、国会と日本という国のゆく
へ。世界中から毎日のように流れてくるテロのニュース。その一つ一つが、真面目で
几帳面な性格の彼女の中に、一つ一つ不安の要素として積み上げられていく。しか
し、周りからは「子どもを産めと矢の催促がくる。結婚して5年が経っても、自分達
夫婦の未来も見えないままの状態で、彼女は何を信じていいのかもわからないほど困
惑し、衰弱していく。そして、唯一彼女の中の母性本能だけが「こんな状態で子ども
は産めない」と声にならない声で叫んでいるようだった。
私と親友は、子どものことは気にせずに、夫婦としての時間を大切にすることから
始めたらと話をした。そして、私たちでよければいつでも話を聞くから、一人で抱え
こまないようにと言った。帰り際、彼女は少しだけホッとしたような穏やかな顔つき
で、「またお茶しましょうね」と笑顔を見せてくれた。彼女と同じような想いを抱え
た女性はどのくらいいるだろう。少子化は決して彼女達だけのせいではないというこ
とを、伝えてあげたいと思った。