レースへ向けての練習2(2003.5.3)
レースを10日後に控えた頃から、我家はいろいろと慌しくなる。

それは、レースのエントリの手続きを10日前までしなくてはいけないからだ。そして、その次に、週間天気予報の画面に釘付けになる日が続く。それは、今娘が参戦しているウイークエンドレースが土曜日に行われるので、どうしても直前の練習が前の週の土曜か日曜になってしまうからだ。

カートは、2サイクルのエンジンを使っているのだが、このエンジンのキャブセットは、気温や空気の乾燥状態なのによって変わってくる。また、路面の状態も天候に左右される。つまり、出来るだけレース当日の天気を正確に予測して、その状態に近いコンディションが取れる日に練習したいと思うからだ。

GWに入って、まるで真夏のような天気が続いていたが、週間予報ではGW後に一時的に天気が崩れて週末に持ちなおすということだった。

いろいろ迷った挙句、丁度曇り後晴れの予報が出ていた5月3日に練習に行く事にした。この日は、数ヶ月に一度、新東京サーキットで行っている「新人さんいらっしゃいDAY]に当たっていた。

「新人さんいらっしゃいDAY」とは、カートに乗り始めたばかりの人だけを対象にした専用走行日で、サーキット側のイベントの一つとして開催されている。

通常よりも割引された料金で1日走ることができ、その中で3回ほどレースのシュミレーションを組んでローリングスタートの練習をしてくれるというものなのだ。

しばらくレースに出ていない娘に、スタートの勘を取り戻させる目的もあり、この日に練習に来たのだが…

あまりにも、初めてカートに乗るような人達ばかりが多くて、少し面食らってしまった。カートを見るのも初めてなのではないか? と思うような人が多かったのだ。

これには娘はかなり困惑していた。通常の練習のようにブレ―キングを試したくても、前後に極端にペースの違うカートがいることが多く、下手にブレ―キングが出来ないのだ。

当然コースアウトしてしまうカートも多く、酷い時には、コ―ス全線でイエローフラッグが振られ、全線追い越し禁止区間になってしまうこともあった。

娘の通常のラップタイムが41秒代なのだが、コース上のカートの多くが45秒よりも遅いのだ。これではお手上げなので、取り敢えず様子を見ることにする。

PITに戻って来た娘は、いつも一緒に走っているカートとは早さも動きも違うのでかなり戸惑って、「恐い、恐い」と騒いでいた。

あまりにも、コース上のカートの早さが違うので、サーキット側でタイム別クラスを分けて練習させてくれることになったのだが、その基準タイムが45秒より上と下ということで、まだまだいつもの感じでは走れない。かなりタイム差があるにも係わらず、抜くのが苦手な娘は思いきって前に出ることができないのだ。

その結果、いつまでも前の遅いカートにくっついて走ることになる。仕方がなくもう一度PITに呼んで話をすることにする。

私は娘に向かって「いつものカートなら、コーナーで並んでしまったら、コッチは引くしかないし、コッチが引けば、相手のカートはスッと前に出てそのまま行ってくれるでしょ?でもね、今日は慣れていない人が多いから、コッチが引いてもアッチのカートはスッと前には出られないんだよ」

そうすると、娘は困った顔をして考えこんでいる。すると、年令制限の為に一般の時間に走ることが出来ず、いつも初心者のレンタルカートと一緒に練習している息子がこう言って来た。

「そういう遅いカートはね、チョット思いきってズバッと前に出て離さないといつまでも抜けないよ?」

私も、娘の顔を覗きこんで「うん、そうだよ」と頷いて見せる。「分かったやってみるよ」そういって娘の再トライが始まった。

一度コツを掴んでしまえば、元々タイム差のあるカートなので追い付かれるわけではないので、あっさりと抜くことが出来るはずなのだ。

娘は、コーナーの手前で、相手のカートの様子をうかがうように、ちょっと右に出たり左に出たりしながら、次のコーナーでスッとインに入ってきれいに抜く。しばらくして、また違うカートに引っかかるが、今度は迷わずに右からスッとかわす。そんなことを繰り返しているうちに、かなり娘は自信を持って抜けるようになっていた。

「どう、少しタイミングが分かってきた?」と聞くと。ニコッと笑って頷いた。

かなり極端な状況ではあるが、動向が読めないカートを上手くかわしながらの練習はかなりの自信になったような感じであった。

本当なら、もう少しレースと同じような状況の中で練習させたかったが、娘の課題の一つである「自分より遅いタイムのカートをきれいに抜く」練習が沢山で来たことは、それなりにいい練習になったと思う。

来週のレースで、練習の成果を発揮してもらいたい思った。