2003年第2回ウイークエンドレース@新東京サーキット
穏やかな晴天の5月10日に、新東京サーキットで第2回ウイークエンドレースが開催された。

2〜3日前のまでの予報では、25度を超える夏日になるはずだったのが、風が冷たく陽射しの割には気温が上がらず、なかなかのレース日よりとなった。

今回のレースは、YRA-1という新しいタイヤを使って行われる初めてのレースなので、私達としてはレースのタイムがなかなか先読み出来ずに困っていた。

午前9時 公式練習開始
取り敢えず、前回の練習のセットのまま走らせてみる。第1戦が2月の頭に開催されたためか、実質的には今回からレースに参戦するという人が多かったのか?練習での全体的なレベルはそれほど高くなかった。娘のカートは、コーナー出口で若干リアの踏ん張りが低いような動きを見せてはいたものの、タイム的には上位を狙いそうな感じであった。

PITに戻って来た娘は、カートを降りるなり「今日、すごく滑るから、もう少しセットを変えて!」と主人に言った。こんなに事を自分から言うのは初めてのことだった。そして、「どうもブレーキングが納得行かないから、ちょっと他の人の走りを見てくるから、宜しくね」とPITロードに向かって走って行ってしまった。

今まで、なかなか自分からセッティングに注文を出して来たり、他の人の走りを見て研究するようなことが殆どなかった娘なのだが、中学生になって自分の走りを自分なりに分析出来るようになったらしい。娘のちょっとした成長を発見した気がした。

午前10時 タイムアタック開始
今回のSクラスのエントリは21台。前回のレースよりは若干少ない台数だが、それでもやはり他のクラスよりかなり台数が多かった。
娘が、自分なりにブレ―キングをコーナーの奥でしっかり行うことを心がけて走ったせいか、42秒台のタイムが多い中1週目から41秒第中ごろのタイムが出る。しかし、3週目でブレ―キングミスにより、2コーナーでコースアウトし、エンジンが止まってしまう。慌てて主人がヘルプに入り再スタートさせる。5分間しかないタイムアタックの時間でのコースアウトはかなり痛く、娘に残された時間は約1分しかなかった。しかし、猛然と攻めた走りを見せた娘は41.2秒というタイムを出し、予選第1ヒート12位スタートになる。

午前11時 予選第1ヒート開始

一斉にダミーグリッドからカートをスタートさせた時のこと、ポールポジションのカートのエンジンがなかなかかからず、かなり出遅れてしまった。そのため、そのポールのカートが定位置に戻るまで、いつもより1周多くフォーメーションラップを行うことになったのだが、そこに大きな落とし穴があった。フォーメーションラップ3周目でポールに戻ったカートが、定位置に着くなりいきなり隊列のペースをガクンと落としたのだ。カートのエンジンは、急にスピードを落としてのろのろと走ると、ガソリンが過供給になってしまい、プラグから火花が飛びにくい状態になってしまい、最悪の場合はエンジンが止まってしまう。そのため、ペースの遅いフォーメーションラップでは、ガソリンタンクからエンジンに伸びるホースを指でつまんだりして、エンジンがかぶらないように対処するのだが…。ガソリンのホースをつぶすにもかなり力が要り、娘の指の力ではまだ上手に出来ないこともあり、娘にはそのことを教えていなかったのだ。そのため、スタートの日章旗が振り下ろされ、スピードを上げる段階で娘のエンジンはかぶってしまってしたのだった。隊列の中盤にいた娘は、スタートできないと悟った瞬間大きく手を上げて、周りのカートに自分のカートの異常を知らせたので、他のカートを巻き込んでの事故にはならなかったが、結局エンジンは復活できず、そのままリタイヤとなってしまった。

午後1時 予選第2ヒート開始
娘のほかにもスタートできなかったカートが有ったために、娘は20位からのスタートとなった。今回はきれいにスタートを切り、猛然とダッシュをかける。スタート直後に2台抜き、どんどん前のカートにアタックをかけていく。先週の初心者の人との練習の成果が早速現れ、危なげなくどんどん抜いていく。結局10周の予選で8台の抜き12位でフィニッシュ。第1ヒートの結果と総合して、決勝は17位でスタートすることになった。

午後2時30分 決勝開始

気温20度ということで、思ったよりも過ごしやすい陽気の中でのレースになったが、決勝のグリッドについた娘はかなりお疲れ気味の様子。それもそのはず、実は娘は前日まで中学の自然教室に参加していて、2泊3日で富士山で山歩きをして来たのだ。「もうこれで終わりだから、頑張れよ!」という主人に向かって、「決勝終わったら寝てもいい?」等と言っていた。前回のレースの時には、スタート前に「緊張する。緊張する」と言い通しだったことを考えると、少し自分の走りに自信が出て来てリラックスしてレースに臨むことが出来るようになったのだろうと思った。それでも、「スタート」の声がかかり、ステアリングとシートに手をかけて押しがけの体制に入り、ヘルメット越しにコースを見据える娘の瞳は、先ほどまでの娘とは違った厳しいものが感じられた。

決勝スタート。今回もスタートで上手くダッシュをかける、上位のかなりの台数が集団になり、混戦状態のままレースが続く。レース中盤の2コーナーで、その集団の最後尾付近で多重クラッシュが発生してしまう。かろうじてクラッシュに巻きこまれることを避けた娘だったが、そのまま2コーナーのグリーンにコースアウトしてしまう。普通ならそのままリタイヤしてしまうのだが、どうにかエンジンが止まっていなかったので、娘は必死にコースに戻り、最初はノロノロ状態で止まってしまいそうだったエンジンを、どうにか復活させて戦線に復帰してくる。それから猛然と追走をはじめる。コーナーでのブレ―キングにも気合を感じる。走りながら前のカートとの速度差を少し感じたらしく、こちらで指示を出したわけでもないのに、ストレートに差しかかると、自分でキャブの調整を行い、エンジンの回転を調整して来た。そして持てる力のすべてを集中して前のカートを追いかけ、抜いた! その後も前のカートをめがけて気合の走りが続く。結局、クラッシュ後2台抜き、13位でフィニッシュになった。しかし娘は、かなり悔しかったらしく、ゴール通過直後、ステアリングを叩いて悔しがっていた。

今までのレースなら、悔し泣きをしているところなのだが、今回の娘は違っていた。かなり悔しがってはいたが、これだけいろいろなアクシデントに巻きこまれながら、一回も涙を流すこともなく、常に自分の走りを振りかえっては、次にどう走るか?を考えていた。

結果的には、21台中13位に終わり。ドライコンディションでの入賞という当初の目標はクリアできなかったが、走りの内容では充分評価出きる物であった。