ヘルメット
モータースポーツの選手にとって、ヘルメットは必需品である。

キッズやジュニアカーターの多くは、有名なドライバーのレプリカをかぶっていることが多いのだが、我家ではいつもオリジナルで彩色したものを使用してきた。

始めは、簡単なラインを入れただけのシンプルなものを使用していた。それこそ、他の子のメットと見分けがつけば良いと思ったからだ。

しかし、「レースに出よう!」ということになってから、デザインや色などに凝るようになってきた。それは、ドライバーにとってヘルメットは「顔」と同じものだからだ。

同じレースにエントリをしている他のチームの選手の、顔は知らなくても、レーシングスーツやヘルメットは知っている、ということも良くある。

ヘルメットの塗装は、主人の担当だ。主人は、子供のころ趣味で、プラモデルに色を塗っていた、その要領で仕上げていく。

始めは、缶のスプレーなどを使っていたのが、デザインに凝り始めてから、道具にも凝り始めるようになってしまった。

ヘルメットは、使っているうちにあちこちぶつけたりして、塗装はすぐに剥げてしまうので、塗りなおすことになる。

するとそのたび、主人は子供達とデザインを相談し、色を決めて、新たなデザインで塗りなおしてきて、昨年から使い始めたデザインで5バージョン目になる。

さすがにそれだけの回数塗りなおしていると、主人の腕前もなかなかになり、始めて子供達のヘルメットを見た人は、プロに頼んで塗ってもらっているのかと思うほどになった。

子供達にしても、自分の好きなデザインや自分で選んだ色で塗ってもらったメットをかぶるのはかなり嬉しいらしく、新しいバージョンがしあがると、ひと通りカート場の知り合いに見せに歩いたりしている。

こう見ると、親が子供と一緒にデザインを決めてヘルメットを塗るなんて、なんてい話しだろう!と思われる方も多いかも知れない。

しかし、いくら道具や腕前が良くなっても、都会のマンション暮らしの我家である、専用の塗装ブースが用意できるわけではなく、主人は、フローリングの居間の片隅に新聞を敷いて塗装をしているのだ。

つまり、作業が始まると、我家の居間はいきなり、ペンキ屋さんの倉庫のような匂いが充満して、フローリングにも所々にペンキが飛ぶのだ。

居間の食卓の上で、つぎのメットのデザインの相談をしている、主人と子供達を見ながら、「1日でも早く、子供達にスポンサーが付くようになって、ヘルメットだけはプロに塗ってもらえる身分になりたいなぁ〜」と、心から願う私だった。